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幸運の女神-第二部 7

[491]  朝倉令  2006-09-04投稿


「いやぁ、大抜擢(だいばってき)ってヤツだね、諒司くん、…じゃなかった、マネージャー」



コルス厨房スタッフのチーフ、長島幸司が明るい笑顔で言う通り、アルバイトからいきなりフロアマネージャー見習いにされた俺、倉沢諒司である。



人物評価の辛さでは『某店の五十倍カレーをもしのぐ』とまで噂される手島美和が俺を引っ張り上げたのには少々訳があった。



話は数日前にさかのぼる。





『マネージャー?…なぜに
俺が…』


『アナタね、恵利花さんのご両親に挨拶する時、フリーターです、じゃ格好つかないでしょう?』



思考停止中の俺に、手島美和が呆れ顔で事もなげに言う。



(挨拶だって?……)



俺は話の展開の早さについていけず、聞き役に回る事にした。



『アナタ達二人は、決して離れてはいけないのよ?

 そのために最も確実なのは一緒になる事じゃない。
 ウフフ…せいぜい頑張りなさい、おムコさん』


『…………』







そんな事情もあって、今までの様な気楽な身分では無くなった。


それでも、柿崎信一のサボリ癖を除けば、差し当たって大きな問題はない。



ただ、ひとつだけ……






「ねェねェ、あたし達もアルバイトで雇えない?
ちょっとお小遣い欲しくてさぁ〜」


「諒司マネージャー、よろしくねーっ」


「お〜い、…エリカにヒナちゃん、マジかよ?」



ウエートレスの江藤由佳が、突然の「出来ちゃった婚」で辞めそうだとほのめかせた所、品川恵利花と小坂雛がバイトで入りたいと言い始めたのである。



考えようによっては願ってもない話か。


彼氏の俺が言うのも何だが、キリッとした二枚目(?)のエリカと少女の様に愛らしいヒナが加われば、それこそ売り上げ倍増は必至に違いないだろう。





と、…いつもながら俺の予想ってヤツは甘い。



彼女たちの影響力には、計り知れないモノがあったのである。






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