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続いた世界のある結末 (1)

[515]  若瀬祥  2010-11-01投稿

無意識に足早になる。仕方ないか…、ずっと待ち望んでいたんだから。少し汗で湿った背中も、今は気にならない。早く、速く、あの人の元へ。


緩やかな坂を登る。走る事は出来ないから…、とにかく急いで。
見えた。かつて長い間過ごした古小屋が。


視線を二階の窓へやる。窓は閉めているが、ガラスがついていない。枠だけの窓は風をモロに中に入れ、備え付けのカーテンが煽られている。

その時。



一際強い風が吹いた。
部屋が露になる。



「あっ…」


喜び、嬉しさ、
それだけでは到底表現出来ない感情が押し寄せる。


やはり… やはり!


『彼女は待っていてくれた!!!』


頬が緩む。
途中、足が縺れそうになる。

だが少年…、いやもう青年か。青年は止まらない。


ついに小屋の前に着いた。震える手でドアを開ける。埃が立ち込め、視界を奪うが、すぐに治まった。



小屋の中は以前と変わらない。本が所狭しと並び、床にまで積んである。本題に四方囲まれた、部屋の中央は机と椅子が二組向かい合わせになっており、ここも当時のままだ。


机の上に何かがある…?
白い…本?


不審に思い、机に近づく。これは、彼女がいつも片時も手離さずに、持ち歩いていた物だ。


当時、少年は触らせてもらえなかった。


青年は本に手を伸ばす。
題名も、装飾すら何も入っていない、無地だ。


傷つけないよう、ゆっくりと開く。


「……………ッ」


真っ白だった。何も記されていない。


彼女に昔聞いたことがある。これは何の本かと。


すると彼女は笑って答えた。


本じゃないわ。あなたとの日記なの、これは。 と。


だから、これが真っ白と言うことは、そんな日々を彼女が過ごしてきたということ。


胸が苦しくなる。でも…今更だ。


泣きそうな顔をしながら、ページを捲る。


白紙だった。最後まで。



本を脇に抱え、階段を登る。

ギシッ ギシッ と板が軋む。


二階は一階と似た構造だ。ただ、机と椅子の置いてあった場所に、ベッドがあるだけ。


先程の、窓に目をやるが、カーテンが風に揺れているだけ。彼女の姿はない。


いやそんな… まさか見間違い? そんな…まさか


「はっ…、翅さん!いるんだろ?」


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