どこにいても、16
僕が顔を上げると松村は泣いていた。
「そんな悲しいこと、言わないで」
「…」
「花歩、あたしにさよならは言わなかった」
「…僕には…待っててねって…」
涙があふれだして松村の姿が滲んで見えた
「花歩がお別れを選んだのは大輝君と生きたかったから、会いたかったからだよ。大輝君は会いたくないの?」
会いたい。吉岡にもう一度会いたかった
「あたしは花歩のこと信じる。でも大輝君が信じてあげなくてどうするの?」
「…」
「生きよう。花歩もそれを望んで…」
松村はそこまで言うと声を詰まらせて部屋から出た。
―私は生まれ変わるの。ずっと、大輝の傍にいれる人に
そうだよな。吉岡は嘘をつかない。僕が信じて待ってればきっと会える。
でも待てるだろうか?
―大輝には待っててほしい
どうして僕から会いにいっちゃいけないのだろう。
部屋の外からは松村の嗚咽が聞こえる。
僕が死んだら吉岡の所にいけるんじゃないだろうか
そこまで考えたとき人の気配を感じた。
すぐそばから伝わってくる、よく知っている気配。
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