踏み出す一歩(前編)
「ねえ、いつもここにいるね。」
夕暮れ時に、いつも高台にいるその人に私は話し掛けた。
「ここで何をやっているの?」
唐突な私の質問に、その人は笑顔で答えた。
「この景色を眺めているんだ。昔、好きだった人と、よくここに来ていたから…。」
「確かにいい景色。街の明かりが少しずつ灯っていって、ちょっとした夜景スポットだね。今まで気が付かなかった。」
「僕も大好きなんだ。」
そう言ったその人の表情はどこか淋しげで、過ぎ去った遠い過去を見ている様だった。
「ねえ、私は遠藤美咲。あなたは?」
「僕?僕は仲村大介。」
「また来てもいい?」
「うん、いいよ。」
その人はまた笑顔になり、そう答えた。
学校帰りにいつも見てはいたけれど、いざとなるとなかなか話し掛けられず、ずっと素通りしてきた。
(けれど、やっぱり話し掛けて良かった。)
そう思いながらテレビを見ていると、特別番組がやっていた。
その映像を見た瞬間、私は驚きを隠せなかった。それは今から10年ほど前のこと。当時、あの高台で一組のカップルが睡眠薬を大量摂取して心中するという事件が起こった。人通りのない場所だったため発見は遅れたが、女性の方はなんとか意識を取り戻し生還したが、男性の方は、そのまま意識が戻らず、亡くなったという…。
夕暮れ時に、いつも高台にいるその人に私は話し掛けた。
「ここで何をやっているの?」
唐突な私の質問に、その人は笑顔で答えた。
「この景色を眺めているんだ。昔、好きだった人と、よくここに来ていたから…。」
「確かにいい景色。街の明かりが少しずつ灯っていって、ちょっとした夜景スポットだね。今まで気が付かなかった。」
「僕も大好きなんだ。」
そう言ったその人の表情はどこか淋しげで、過ぎ去った遠い過去を見ている様だった。
「ねえ、私は遠藤美咲。あなたは?」
「僕?僕は仲村大介。」
「また来てもいい?」
「うん、いいよ。」
その人はまた笑顔になり、そう答えた。
学校帰りにいつも見てはいたけれど、いざとなるとなかなか話し掛けられず、ずっと素通りしてきた。
(けれど、やっぱり話し掛けて良かった。)
そう思いながらテレビを見ていると、特別番組がやっていた。
その映像を見た瞬間、私は驚きを隠せなかった。それは今から10年ほど前のこと。当時、あの高台で一組のカップルが睡眠薬を大量摂取して心中するという事件が起こった。人通りのない場所だったため発見は遅れたが、女性の方はなんとか意識を取り戻し生還したが、男性の方は、そのまま意識が戻らず、亡くなったという…。
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