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ショートストーリー(冬のひととき)

[298]  つもん  2010-11-21投稿
「寒っ…」

隣で手を合わせながら溜め息まじりに言う女性は、僕の彼女の由紀。
頬と鼻が真っ赤だ。

「なんでそんなに薄着で出てくるの?風邪ひくじゃん。」

「う゛っ〜…
だって、こう君が急に呼び出すからさ…」

そう、僕はこんな寒い日の夜に無性に由紀に逢いたくなって、先ほど彼女にメールしたんだ。
だからって上着も着ずにでてくるなんて、またそんな彼女が愛おしくて仕方ない。

「風邪引いたら困るから、これ着て。」

僕は着ていたジャケットを彼女に渡す。

「ありがと…。
こう君なんかあった?急に連絡きたからびっくりしたよ。」

まさか聞かれるなんて。

「ん…。秘密。」

言えるわけない。
逢いたかっただけ、なんて。


「え〜、気になるじゃんよ。」

僕は微笑みでごまかした。


「そうやってごまかさないで〜
なんかあったんでしょ?どうしたの?」

なんもないよ、本当に逢いたかっただけなんだ。


「うん。
じゃあさ、由紀キスしようよ。」

「は??こう君答えになってないよ?」

真っ赤になりながら答える由紀が本当に可愛い。


だから思わず彼女の右腕を引っ張ったんだ。

「…っ」


ほんの少しだけ触れていた唇が離れる。

「…こう君っ…外だよ…」

由紀は恥ずかしいのか耳まで真っ赤だ。

「かまわない。もう一回。」


「やっ…」


由紀の返事を聞く前に
今度は頭ごと引き寄せて深いキス。

「んっ…」


しばらく離れられなくて
深く由紀を味わっていたら
苦しいのか胸を叩いてきた。


由紀を離してやると
顔が真っ赤で息が荒い。
苦しかったんだろう。


ごめん。
由紀を前にすると我慢ができないんだ。

「さっきの答えはね…」


由紀の耳元でそっと言うと
やっぱり由紀は茹でダコのようになった。




『…由紀にどうしても逢いたくなったんだ。』


──ある冬のひととき。

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