ベースボール・ラプソディ No.53
「どうだった?」
戻ってきた哲哉に、大澤が問いかけた。
「駄目でした、話を切り出すことすらできませんでしたよ」
哲哉がかぶりを振ると、大澤は残念そうに息をついた。
「…そうか、あの運動神経ならば、野球の経験がなくても戦力として期待できそうだったんだがな」
大澤はそういって須藤に視線をむけた。
哲哉が八雲達のところへ足をはこんだのは、須藤の勧誘が目的であった。
初戦を無難に終えたものの、控えの選手が一人もいない現状には、さすがに不安があった。
この現状を危惧した哲哉は大澤と謀り、どの部にも属していない須藤に目をつけた。
だが、偶然でた話題で須藤のプロレスにたいする強い想いを知ると、哲哉としてはそれを断念せざるえなかった。
哲哉が事情を説明すると、大澤は須藤に視線をもどした。
毎日のようにやってきては、八雲に関節技をかけて帰っていく彼を、大澤は変わった男だという印象しかもっていなかった。
その須藤が大きな夢をもち、真剣に向き合っていると知ると、単なる変わり者ではなかったかと認識をあらためた。
そして、それと同時に一つの疑問点が、大澤に生じていた。
「…そこまでプロレスに本気な奴が、何でわざわざ時間をさいてまでして、あのアホにつきあってくれているんだ?」
「……自分らが入学してすぐの事なんですが、八雲と須藤のクラスの担任が、将来の夢についてクラス全員にたずねたらしいんです。
そこで須藤が世界一のプロレスラーになるというと、一斉に笑い声があがったそうです。
その時八雲が真顔で全員に聞いたらしいんですよ、何が可笑しいんだって。
須藤の体つきを見れば、真剣に体を鍛えているのがわかるはずだ。
本気で夢を追いかけてるヤツを笑えるほど、みんな真剣に生きてるのかって。
その時から、須藤にとって八雲は唯一の理解者になったんですよ」
戻ってきた哲哉に、大澤が問いかけた。
「駄目でした、話を切り出すことすらできませんでしたよ」
哲哉がかぶりを振ると、大澤は残念そうに息をついた。
「…そうか、あの運動神経ならば、野球の経験がなくても戦力として期待できそうだったんだがな」
大澤はそういって須藤に視線をむけた。
哲哉が八雲達のところへ足をはこんだのは、須藤の勧誘が目的であった。
初戦を無難に終えたものの、控えの選手が一人もいない現状には、さすがに不安があった。
この現状を危惧した哲哉は大澤と謀り、どの部にも属していない須藤に目をつけた。
だが、偶然でた話題で須藤のプロレスにたいする強い想いを知ると、哲哉としてはそれを断念せざるえなかった。
哲哉が事情を説明すると、大澤は須藤に視線をもどした。
毎日のようにやってきては、八雲に関節技をかけて帰っていく彼を、大澤は変わった男だという印象しかもっていなかった。
その須藤が大きな夢をもち、真剣に向き合っていると知ると、単なる変わり者ではなかったかと認識をあらためた。
そして、それと同時に一つの疑問点が、大澤に生じていた。
「…そこまでプロレスに本気な奴が、何でわざわざ時間をさいてまでして、あのアホにつきあってくれているんだ?」
「……自分らが入学してすぐの事なんですが、八雲と須藤のクラスの担任が、将来の夢についてクラス全員にたずねたらしいんです。
そこで須藤が世界一のプロレスラーになるというと、一斉に笑い声があがったそうです。
その時八雲が真顔で全員に聞いたらしいんですよ、何が可笑しいんだって。
須藤の体つきを見れば、真剣に体を鍛えているのがわかるはずだ。
本気で夢を追いかけてるヤツを笑えるほど、みんな真剣に生きてるのかって。
その時から、須藤にとって八雲は唯一の理解者になったんですよ」
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