スカバンburn!!〜夢〜 -103- 好きじゃなければ
翼「…」
家を飛び出した翼は、うつ向いたまま見知らぬ場所を歩いていた。
(…くっそ…くそくそくっそー)
頭の中をぐるぐると先ほどのやりとりがめぐる。ちひろの言葉、黙ってうつ向いたままの伸昭、そして今にも泣き出しそうな美弥の表情。握り締めた拳が痛かった。
(俺だってわかってんねん…でも…先なんかちっとも見えへんやんか…)
諦めた時のことを想像すると気持ちがほっとする。諦めないで進む自分を想像すると気持ちが重くなる。そんなことを考えながら歩いていると、交差点にさしかかった。聞き慣れたメロディが耳に入り、翼は顔を上げた。
高いビルの大画面に映りだされたのは“ワイルド・ワン”のプロモーションだった
画面に映った4人と自分の間の距離――その遠さを感じて、翼の拳にますます力がこもる
(夢なんかなかったら、もっと楽な道を選べんのに…音楽なんかなかったら、俺は夢なんか見いひんで良かったのに…音楽がなければ…)
翼の足はとまらない
目の前の青信号は点滅を始めていた
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