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奈央と出会えたから。<422>

[521] 麻呂 2011-01-21投稿

聖人の事、入学当初からライバル視してて、



聖人と、もう何度もトラブってるヤツ。



聖人は、全然相手にしていなかったんだケドね。



『あ?』



タツヤとは、数々の伝説を作ってしまった事実があるから、



聖人は、鋭い目つきでソイツをにらみつけたんだ。





『1位取れてよかったよな。

それと、さっき、ステージに向かって叫んだの、俺だから。』



そう言い終えると、



タツヤは照れ臭くなったのか、



あたしとユカには目も向けずに行ってしまった。



聖人も、その後ろ姿を、クールな眼差しで見ていた。



そして、



あたし達3人が、言葉を発する事もなく、あぜんとしているところへ現れたのが、



担任の渋川だった。



おそらく渋川は、



今のタツヤとのやり取りを近くで見ていて、



タツヤが、この場を立ち去ったのを確認してから、



あたし達に近付いて来たのだと思った。



渋川は、近付いて来るなり、



聖人の方を向き、こう言ったんだ。





『北岡。

お前達の合唱は素晴らしかったぞ。

私は、お前の事を誤解していたと言いたいところだが、

そうではなかったという事に、今気付いた。

私は、お前の事を理解しようとしていなかった。

すまなかった。』





渋川の言葉に、



あたし達3人は、



顔を見合わせて、



お互いに、自分の耳を疑ったケド、



渋川の表情は真剣だったから、



その言葉に嘘はないって思ったんだ。





『いいよ、センセ。

大人にも事情ってもんがあンだろ?!』





聖人が、



笑顔で渋川にそう言ったトキ、



渋川は、



右手を差し出し、



握手を求めた。



そして、



聖人も、



その手に自分の手を重ねた――



あのトキ、



渋川の目から涙が流れていたのは、



合唱コンクールで1位を取れたから?!



それとも、



聖人と和解出来たから?!



きっと、



両方なんだろうね――

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