チンゲンサイ。<50>
『ユキエ。ユウの連絡網を見せてくれ。』
ユウは、俺がユキエにそう言うと、次の行動が読めたのか、真っ先にそれを阻止しようとした。
『オヤジ。まさか秋場と金田の家に電話しようとしてるんじゃないだろうな?
だったらやめてくれよな。あの二人は学年でも喧嘩が強い奴らなんだ。
明日また、ボコボコ にされちゃうよ。』
ユウの傷の手当てをするユキエの表情も暗かった。
『ユウ。昨日、お母さんがクラス全員の前で余計な事を言ったから、嫌がらせを受けたのね。
ごめんね。でもお母さんは後悔はしてないから。
ユウと一緒に戦って行く覚悟で言ったんだから。』
『それは分かってるよ。オヤジと母さんが俺の為にしてくれたって事もさ。』
ユキエの言葉にユウも答える。
それは、ユウが俺とユキエの気持ちを理解してくれていると分かった瞬間だけに嬉しかった。
ユキエとユウは、連絡網を調べる俺の顔をじっと見ていたが、
俺は構わず、電話に手を掛けていた。
まずは秋場からだ。
『私、お宅の息子さんと同じクラスの、山田 ユウの父親ですが、いつもうちの息子が大変お世話になっております。
実は今日、うちの息子とお宅の息子さんとの間でトラブルがあったようで、
どうも、お宅の息子さんから殴られたようなんですね。』
俺が相手の親にそう言うと、思っていたとおり親は逆ギレし、物凄い剣幕でまくし立てて来た。
《冗談じゃないですよ!!うちの息子が理由も無しに、お宅の息子さんに手を出すなんて事はありえないと思います。
こちらだけが悪い様な言い方をしないでくださいよ!!》
電話の向こうの母親は、かなり興奮している様だった。
『ですから、それを今お話しようとしている訳でして。
あの、息子さんは今お家にいらっしゃいますか?』
穏便に話をしたいと思っていた俺だが、相手の母親は、全く聞く耳を持たなかった。
《いません!!子供同士の問題に、いちいち親がしゃしゃり出る必要は有るんですか?!
もしかしたら、うちの子が被害者かも知れないじゃないですか。
とにかく、息子は今家にはいません!!ガチャッッ……》
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