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チンゲンサイ。<55>

[384] 麻呂 2011-01-28投稿

* * * * * *

渋川が提唱するイジメ対策案を受け、


学校側が慎重に配慮してくれた結果、


ユウへのイジメは明らかに消沈傾向にあった。


その間、俺達夫婦も幾度となく学校へ足を運んだ。


本人いわく、陰口や中傷の言葉を度々耳にする事はあるらしいが、


秋場や金田から金をせびられたり、暴行を加えられたりする事は、全く無くなったという。


学校側の配慮だけで、イジメ問題がここまで改善されるとは思ってもいなかった俺に、


その理由が明らかにされたのは、


ある日の夕方、ユウを迎えに訪れた、学校からの帰り道での事。


ユウと一緒に家路に向かう途中、


一人の少年に出会ったからであった。



『山田。』



中学生らしからぬ渋めの低い声。


俺達親子の前に立ちはだかる様に、不意に目の前に現れたその少年の身長は、


俺とユウの頭一つ分ほど飛び抜けており、髪は明るく染め上げ、耳にピアスを幾つもしていた。


『あ…北岡君。あの…いつも助けてくれてありがとう……。』


しどろもどろに話すユウの口調と、その少年のいでたちから、


この少年が、ユウとは異人種であり、生徒同士の間では、かなりの権力者である事が伺えた。



『何かあったら、すぐ俺ントコ来いよ。』


すれ違い様に響いた、少し低めのその声には、暖かささえ感じた。


『は…はいっっ!! ありがとうございます!!』


少年に礼を言うユウに聞けば、


その少年は、ユウのクラスの隣の、渋川先生のクラスなのだという。


『俺達と同じ学年という事になっているけど、本当は俺達より2コ上なんだ。

事情があって2年遅れて入学したって話だよ。』



『そうか。見た目はかなり悪そうだな。

ハハハ。でも、お前の事を守ってくれてるなんて、いい人なんだろ?

父さんにはそう見えたけど?』



『うん。今時珍しく硬派な人でさ。

男の俺から見てもカッコイイって思う人だよ。』



『ほおぅ。じゃあまるで父さんみたいだな?』



『あ?何言ってんのオヤジ。全然ちがうし。』



『おっ!!言ったなこのっっ!!』

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