Kiss me!*17
「ユキ……来てくれたんだ」
ケイタはそう言いながら起き上がろうとした時、激しく咳き込みだした。
「起き上がんなくていいから、寝てなよ」
「……うん」
風邪引いたんだ。
でもただ寝てるだけで、頭を冷やすとかってことは何もしてない。
「熱、測った?」
「測ってない」
「体温計と氷枕、どこにあるの?」
「体温計は下の引き出しのどこかにある、かも。氷枕は……」
小さい声でケイタが言うと、また咳き込み始めた。
私は部屋を出て階段を下りて、リビングに向かった。
言われたように引き出しを探していると、引き出しの奥に体温計があった。
体温計を持って部屋に戻ろうとした時、棚に飾ってある写真立てが目に入った。
小学生くらいの時のケイタと、その両隣にはケイタのお父さんとお母さんがいる。
幸せそうに写っている家族写真がそこに沢山飾ってあった。
あ、見とれてる場合じゃない!
氷枕は冷凍庫の中。
氷枕を取り出してタオルにくるむ。
冷えピタもあったから、それも一緒に持って2階に上がった。
*
「38度5ぶ……」
完璧に風邪だ。
「薬飲んだ?」
「……飲んでない」
「何で飲まないの?! まったく……。ご飯は食べた?」
「……食べてない」
「食べなきゃダメじゃん。食べなきゃ薬飲めないんだよ」
「じゃ、何か作って?」
何かって、何だ。お粥とか?
勝手に作っちゃっていいのかな。
でも食べさせないとなあ……。
私はキッチンに向かった。
*
「意外と、料理できるんだね」
お粥の作り方はお母さんの見よう見まねだけど、なんとかそれらしいのができた。
味は、悪くないはず。
ってか……意外って。
「じゃ、薬飲んで寝なよ? 私帰るから」
「……いてくれないの?」
そんなケイタの言葉に、私はドキッとしてケイタを見た。
「しょ、食器洗ってくる!」
食器の乗ったお盆を持って、足早に部屋を出た。
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