スカバンburn!!-141.5-〜聖二〜 本当の君は?4/6
―――3月
『卒業おめでとうございます』
校内のあちこちから聞こえる声。運動場では卒業生に花やら手紙を渡す生徒達。その様子を俺は屋上から見下ろしていた
「…行かへんの?」
秋奈の右手に握られた小さな花束
「…」
あの山岡はひときわ多くの生徒に囲まれていて、ここからでもすぐに見つけられた。秋奈にも見えてるだろう
「やっぱりあいつのこと好きなんやろ?」
たくさんの花や手紙を貰う山岡は始終笑顔を見せていたが、時折見せる仕草や様子からは秋奈を探しているとしか思えなかった
「…別に好きでも何でもないもん」
俺の気持ちの奥で矛盾した感情がまた動く
「この花もね、つい買っちゃっただけ。あまりに綺麗だったから…」
「…」
午後を過ぎると朝の式なんてなかったみたいに運動場も空っぽになった
俺達は黙ったまま裏庭の花壇に来た。誰かを祝うように、秋奈を笑うように咲く花壇の隅にあの小さな小さな花束を秋奈は丁寧に植えてしゃがんだまま手をあわせた
この日、秋奈の恋が死んだ
俺は彼女の後ろにただつっ立っていた。その時の秋奈の涙もこの小さなお墓のことも知っているのは俺だけ
また膨れた矛盾した感情を、俺はまた奥底へ沈めた
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