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君とすごした日-20(完)

[391] シンプル 2011-03-04投稿
「やっぱり亮君じゃなきゃダメみたい…」
「わたしたち、ずっと一緒だよね!!」

…繋いでいた僕の手をスルリと解いて、彼女が走り去ったところで夢から醒めた。



「パパどう?可愛い?」
「まぁ、私が着てたら、どんな服でもパパは可愛いって言うもんね」

優子と別れて、もうすぐ5年になる。
娘の愛美は真新しい中学の制服を着て、僕の前でクルリと回ってみせた。

「そうだなぁ、可愛いけど… ちょっと太ったかぁ?」

「もう! パパの意地悪!」

そんなやり取りを、妻の由美子は笑いながら見ている。



久しぶりに愛美を連れて二人で買い物に出掛けた。
日曜の午後とあって、街はすごい人だった。

スクランブル交差点の信号待ち、反対側で待っている母娘に気付いた。

彼女だった。

彼女の親友の美樹から彼女が結婚したことは聞いていたが、少し目立ってきたお腹を見た時、僕の心は少なからずショックを受けていた。

「パパ、青だよ」
娘の声に促されて横断歩道を渡り始める。

だんだん近付いてくる彼女は、以前よりちょっぴりふっくらとした顔つきで、昔と同じあどけない笑顔を携えていた。

すれ違いざまお互いが軽く会釈をして、たったそれだけの再会だった。

横断歩道を渡りきった後、思わず振り返った僕に、彼女は振り返ることなく人混みに消えた。


「ただいま!」そう言って愛美は靴も揃えずに家に走り上がると、
「今日パパったらね、街で会った知り合いの女の人見て、何かデレデレしてるんだよ!」と、妻に話した。
「会釈しただけたろ!?」
僕がそう返すと、
「べえ〜だっ!!」と娘は舌を出した。

「愛ちゃんは、パパが他の女の人見るだけでヤキモチ妬くんだもんね」妻が笑った。

「でもママとパパは、いつまでも大好き同士だから大丈夫!」と、娘の前で妻がいきなり僕にキスをしてきた。
横で見ていた娘は、真っ赤に頬を染めた。



その日以来、彼女が夢に出てくることはなくなった。

彼女の幸せそうな笑顔を見て、僕の心の中には彼女との楽しい思い出だけ残して、この先もずっと彼女が幸せであるようにと…。

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