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願いの叶う公園

[680] 涼太 2011-03-05投稿
会社をクビになった彼は途方に暮れ、とある公園に来た。近くにあったベンチに、まるで崩れ落ちるように腰かける。

「これから、どうすりゃいいんだ……」

彼は頭を抱えて、深く溜め息をついた。

「どうかしましたか?」

突然声をかけられて驚きつつも、顔をあげた。
そこにはボロボロの服を着て、砂まみれの汚れた顔をした、いかにもホームレスといった風貌の中年の男が立っていた。
うっとうしい。俺の気も知らないくせに。

「隣、よろしいですか?」

イライラしながら、

「勝手にしろ」

とぶっきらぼうに答える。
ホームレスが隣に座ると、臭いが鼻についた。思わず、袖で鼻を押さえる。しかし、そんなことはお構い無しにホームレスは話し始めた。

「ここには、神様が住んでいて、願いの叶う公園と呼ばれています。ここで神様と会い、願いを伝えると、その願いが叶う……と」

「馬鹿馬鹿しい」

そんなことがあるわけない。

「おや、あなたは信じないのですか?」

「じゃあ、あんたは信じてんのかよ」

「もちろん。だからここにいるんです」

「でも、あんたのその様子じゃあ叶ったようには見えないけどな」

「夢を持つのが悪いことだとは思いませんがね。あなたにも、願い事が一つくらいあるでしょう?」

「ああ、会社に復帰したいっていう、立派な願いがね」

「信じるものは救われる……ですよ」

「そんなバカなことしてる暇あったら、仕事探してた方がいいね」

「夢のない方だ。そんなんだから、クビになったんじゃないですか?」

何だと? バカにするのもいい加減にしろ!

「ふざけんな!! お前に何がわかる! もういい、お前なんかと話してた俺がバカだった」

彼は激昂して足早に立ち去った。

一人残されたホームレスは、その背中を見ていたが、足元から音楽が聞こえてきて、そっちを向いた。
鞄が置いてあった。彼が忘れていったのだろう。音楽はそこから聞こえてくる。
ホームレスは鞄を開け、ケータイを取りだし電話に出た。

「ヒロタさん。さっきはすいませんでした。まさか、本当にクビになるなんて……。今、本当のこと部長に言ってきました。早く戻ってきてください。……ヒロタさん?」

「だから信じた方がいいって言ったのに……」

ホームレスは不適な笑みを浮かべて、電話を切った。

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