代用
今日も妻は調子がすぐれないようで、朝からずっと寝たままでいる。
仕方がないので、妻の代わりにまだ幼い娘のために夕食を作ることにした。カレーだ。
料理はそれほど得意と言うわけではないので、時間がかかったし、味にも自信はない。それでも、なんとか夕食の時間には間に合った。その間、テレビを見ながら娘は静かに待っていた。
「そら、出来たぞ。先に食べてなさい。今、ママを呼んでくるからね」
優しくそう言って、私は妻を連れてきた。3人で食卓を囲み、食事を始めるが、妻はまだ体調が悪いのか、まるで食べようとしないし、娘も食欲がないのか、テレビを見たままでカレーに手をつけようとしない。
「おい、一体どうしたんだ? 大好きなカレーだろ? ほら、食べなさい」
そう言って、スプーンを娘の口に持っていくが、やはり食べようとしないで、泣き出してしまった。それを見て、黙っていた妻がついに怒った。
「やめなさい! 夏実! 泣いてもどうにもなりませんよ!」
その時、玄関のインターホンが鳴った。急いで向かいドアを開けると、宅配業者らしき格好をした男が荷物を片手に立っていた。
「冴木陽二さん宛ての荷物をお持ちしました。こちらに判子をお願いします」
「はいはい」
判子を押して、荷物を受け取ると、男は
「大丈夫ですか?」
と心配そうに訊いてきた。
「え?」
「いや……、なんか顔色が悪いので……」
「ああ、……娘の事でちょっとね……。妻も調子が悪くてイライラしてるみたいで……」
そう言うと、男は
「はあ……」
と首をかしげて、
「あ、時間もないので、これで」
と会釈すると立ち去った。
荷物を渡し終えて、トラックに戻ると運転席でカーラジオを聴いている先輩の田島に俺は訊いた。
「冴木さん家って3人家族でしたっけ?」
「最近までそうだったんだけど、旅行先の事故で2人亡くなって、今は1人のはずだが……どうした?」
「いえ、ただ……妻と娘がどうこうって言ってて……変だなって」
「事故のあとから、どうも様子が変だからな。きっと2人を一度に亡くして、おかしくなっちまったんじゃないのか?」
「やっぱそうなんですかね? なんか、可哀想っすね」
冴木家の話はそれで終わり、田島がトラックを走らせた。
ラジオからはニュースが流れていた。
『失踪からは、すでに丸二週間が経過しています。こちらでも、目撃情報を受け付けています。失踪したのは、友永夕紀さん、32歳とその娘の友永夏実ちゃん、5歳です。……』
仕方がないので、妻の代わりにまだ幼い娘のために夕食を作ることにした。カレーだ。
料理はそれほど得意と言うわけではないので、時間がかかったし、味にも自信はない。それでも、なんとか夕食の時間には間に合った。その間、テレビを見ながら娘は静かに待っていた。
「そら、出来たぞ。先に食べてなさい。今、ママを呼んでくるからね」
優しくそう言って、私は妻を連れてきた。3人で食卓を囲み、食事を始めるが、妻はまだ体調が悪いのか、まるで食べようとしないし、娘も食欲がないのか、テレビを見たままでカレーに手をつけようとしない。
「おい、一体どうしたんだ? 大好きなカレーだろ? ほら、食べなさい」
そう言って、スプーンを娘の口に持っていくが、やはり食べようとしないで、泣き出してしまった。それを見て、黙っていた妻がついに怒った。
「やめなさい! 夏実! 泣いてもどうにもなりませんよ!」
その時、玄関のインターホンが鳴った。急いで向かいドアを開けると、宅配業者らしき格好をした男が荷物を片手に立っていた。
「冴木陽二さん宛ての荷物をお持ちしました。こちらに判子をお願いします」
「はいはい」
判子を押して、荷物を受け取ると、男は
「大丈夫ですか?」
と心配そうに訊いてきた。
「え?」
「いや……、なんか顔色が悪いので……」
「ああ、……娘の事でちょっとね……。妻も調子が悪くてイライラしてるみたいで……」
そう言うと、男は
「はあ……」
と首をかしげて、
「あ、時間もないので、これで」
と会釈すると立ち去った。
荷物を渡し終えて、トラックに戻ると運転席でカーラジオを聴いている先輩の田島に俺は訊いた。
「冴木さん家って3人家族でしたっけ?」
「最近までそうだったんだけど、旅行先の事故で2人亡くなって、今は1人のはずだが……どうした?」
「いえ、ただ……妻と娘がどうこうって言ってて……変だなって」
「事故のあとから、どうも様子が変だからな。きっと2人を一度に亡くして、おかしくなっちまったんじゃないのか?」
「やっぱそうなんですかね? なんか、可哀想っすね」
冴木家の話はそれで終わり、田島がトラックを走らせた。
ラジオからはニュースが流れていた。
『失踪からは、すでに丸二週間が経過しています。こちらでも、目撃情報を受け付けています。失踪したのは、友永夕紀さん、32歳とその娘の友永夏実ちゃん、5歳です。……』
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