携帯小説!(PC版)

桜花

[234] ? 2011-03-19投稿
「うし,そろそろ帰るか?幸太,お愛想で。」
「うん,はいよっ。」恐る恐る大将の方を見た。自分でも認めたことのない核心を突かれたような気がして,何となく居たたまれなかった。
「…またゆっくりおいで」
大将は全てを見透かしたように,静かな罵声とトーンの変わらない口調だった。
「…うん,はい。」
「悪かったなー,急に来て。年末も忙しいだろ。」
「ああ,気にすんな。"なんくるないさ〜"。」
ハハっと男達は顔を見合わせて笑う。

庄司と私は大将の店を後にし,付近のコンビニまで歩き始めた。
「さてと…,ウサ。お前んちは泉町だろ?俺んちは…だから…タクシー2台呼ぶか。」
庄司は話し掛けるような独り言を言いながら,私の2歩先を歩いている。
庄司の後ろ姿を見ながら,この展開に戸惑いを感じ始めていた。
年は和人より老けててパパの彼女より若い。
背丈は和人と同じくらいだけど和人より逞しい。
世間で言う庄司は"アラフォー"。
ひと回り以上年の離れた"オジサン"に今晩の身を委ねようとしている。
「ウサ…?」
庄司の声でハッと我に返ると,庄司は既に携帯電話を左耳に当てている。
「待って!」
庄司の携帯電話を奪い,電話を切った。
「ウサ,何した?どうしたの?もう2時だよ。"テヒ"始まっちゃうよー…。」
"テヒ"とは庄司が好きだという韓流ドラマの主人公だ。
庄司は呆れながら,私の右手に握られたままの自分の携帯電話を外す。
「ウサ,帰りたくないなら…」
その先の言葉に期待して庄司の顔を見上げる。
「好きなだけここにいろ。俺は帰る。」
「なっ…」
「お前言ってたよな。"私には都合の良い関係がお似合いだ"って。お前が寂しい時に寂しさを埋めてくれる誰かが居てくれたら,お前はそれで幸せだと。でもな,俺それ聞いてて,お前は誰かに心から愛されたことがないんだなって思った。でも,それはお前自身も心から誰かを愛したことがないから分からないんだよ。…俺を今までお前の前を通り過ぎてった男共と一緒にしてくれるな。」
私は返す言葉も見つからないまま,振り返った庄司の背中を見送った。
「…30日に来い。」
「…え?」
「30日にまた"あいつ"のとこに来い。」
タクシーの後部座席に腰掛けながら庄司は言い放ち,扉の閉まる間際こちらを向いた。
「…わかったな,ウサ。」
私の返事を待たないで庄司は去った。

感想

感想はありません。

「?」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス