がんばったで賞 112 〜楽しみにしてたんだから〜
電車に乗った2人は、しばらく俯いていた。
アキは、カズヒロが泣いている意味が分からなかった。
『…どうして泣いているの?』
聞いても聞いても、
「大丈夫」
と答えるばかり。
『…タクヤさんに、何か酷いこと言われたの?』
そうだよ。図星。
一番怖いと思ったのは、おもちゃにされそうなアキが、この事実を知らないこと。
すると、アキはカズヒロの手を握った。
『最初で最後の…デートなんだから、泣かないで…。』
アキ自身、これを伝えるべきか悩んだ。
カズヒロが、もっと悲しんでしまうのではないかと思ったから。
『…私…楽しみにしてきたんだから…。』
アキも、もらい泣きしてしまった。
数人しか乗っていない電車の隅で、2人は泣いていた。
カズヒロの頭には何度も、『俺は東条アキの彼氏。』
『耳が聞こえない女は最高。』
あのタクヤの言葉が、焼き付いて離れず、そして、カズヒロの心を傷つけた。
あの人はアキに、何をしようと企んでいたのだろう…。
考えただけで、胸が苦しくなってきて、涙も止まらなくなってきた。
でも…アキを楽しませないといけない。
カズヒロはこの思い出を自分の心の奥に封印するしかなかった。
アキは、カズヒロが泣いている意味が分からなかった。
『…どうして泣いているの?』
聞いても聞いても、
「大丈夫」
と答えるばかり。
『…タクヤさんに、何か酷いこと言われたの?』
そうだよ。図星。
一番怖いと思ったのは、おもちゃにされそうなアキが、この事実を知らないこと。
すると、アキはカズヒロの手を握った。
『最初で最後の…デートなんだから、泣かないで…。』
アキ自身、これを伝えるべきか悩んだ。
カズヒロが、もっと悲しんでしまうのではないかと思ったから。
『…私…楽しみにしてきたんだから…。』
アキも、もらい泣きしてしまった。
数人しか乗っていない電車の隅で、2人は泣いていた。
カズヒロの頭には何度も、『俺は東条アキの彼氏。』
『耳が聞こえない女は最高。』
あのタクヤの言葉が、焼き付いて離れず、そして、カズヒロの心を傷つけた。
あの人はアキに、何をしようと企んでいたのだろう…。
考えただけで、胸が苦しくなってきて、涙も止まらなくなってきた。
でも…アキを楽しませないといけない。
カズヒロはこの思い出を自分の心の奥に封印するしかなかった。
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