知ること
窓の外を魚が泳いでいく夢を見た。
通った跡にぷくぷくと泡を出しながらヒレを動かす様を。
それだけで彼らが生きていくだけで完成された世界。美しい。
ベッドに横になっていた私は、起き上がってゆっくりと窓辺に近づいた。
窓を開けて彼らと泳ぎたい衝動に駆られたが、自然とそれが出来ないことが分かっていた。
彼処には空気がない。だから私は息が出来ない。
手をピタリと窓ガラスにつけ、顔を近づける。
一匹の魚が側まで来てくれた。黄色でしましま。キラキラしたお目が此方を覗いている。
私が笑いかけると、その子も笑った。
「こんばんわ」
「こんばんわ」
微笑んだまま挨拶を交わす。
魚は私を見て言った。
「どうしてそんな所に閉じ籠っている?外が嫌いなのかい」
この広い海を自由に泳げる魚は言った。
私は首をふる。
「いいえ、私はそこに行けないの。水の中では空気がないから息が出来ないのよ」
「分からないな。」
なぜ分からないの、と言った。
「なぜって?そうだな。君が泳ぎたいと願うなら出来るのではないか」
「願ったって叶わないこともあるわ。」
ぷくぷくと泡が昇っていく。
「ためしてみればいい。窓を開けてこちらに来てごらん」
「駄目よ。息が出来ないなら死んでしまう」
ふむ、と魚は頷く。
「それはそうかもしれない。でもやってみなければ分からないのではないか?」本で知った。水には空気がない。だからヒトは水の中では生きられないと。
魚はそれを知らないのだろうか。
「やらなくても分かることもあるのよ」
そう言うと、魚は呆れ顔で、
「やらなくても分かる?可笑しな事を。考えることは大切だが、それは体験ではない。あなたはまだ水の中でヒトが息を出来ない事を知らない」
通った跡にぷくぷくと泡を出しながらヒレを動かす様を。
それだけで彼らが生きていくだけで完成された世界。美しい。
ベッドに横になっていた私は、起き上がってゆっくりと窓辺に近づいた。
窓を開けて彼らと泳ぎたい衝動に駆られたが、自然とそれが出来ないことが分かっていた。
彼処には空気がない。だから私は息が出来ない。
手をピタリと窓ガラスにつけ、顔を近づける。
一匹の魚が側まで来てくれた。黄色でしましま。キラキラしたお目が此方を覗いている。
私が笑いかけると、その子も笑った。
「こんばんわ」
「こんばんわ」
微笑んだまま挨拶を交わす。
魚は私を見て言った。
「どうしてそんな所に閉じ籠っている?外が嫌いなのかい」
この広い海を自由に泳げる魚は言った。
私は首をふる。
「いいえ、私はそこに行けないの。水の中では空気がないから息が出来ないのよ」
「分からないな。」
なぜ分からないの、と言った。
「なぜって?そうだな。君が泳ぎたいと願うなら出来るのではないか」
「願ったって叶わないこともあるわ。」
ぷくぷくと泡が昇っていく。
「ためしてみればいい。窓を開けてこちらに来てごらん」
「駄目よ。息が出来ないなら死んでしまう」
ふむ、と魚は頷く。
「それはそうかもしれない。でもやってみなければ分からないのではないか?」本で知った。水には空気がない。だからヒトは水の中では生きられないと。
魚はそれを知らないのだろうか。
「やらなくても分かることもあるのよ」
そう言うと、魚は呆れ顔で、
「やらなくても分かる?可笑しな事を。考えることは大切だが、それは体験ではない。あなたはまだ水の中でヒトが息を出来ない事を知らない」
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