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アイの実は、どんな味?3

[334] 萩原実衣 2011-04-05投稿
俺は、差し出された服を見て、嫌な予感がした。(たぶん…当たってる)
「君、名前は…?」
「村上秦です。」
「いくつ?」
「26…。」

「えっ…。意外といってるんだ…。20歳くらいかと思った」

その人は、ややひきつっていた。

そう、俺は、モデルにさせられるようだ。


「完璧!!」
スタイリストの人は、自分の仕上げっぷりに満足していたようだが、俺は、七五三のようで笑ってしまった。

「(トントン)入るわよ。出来た?」

「どう?完璧でしょ?」

スタイリストとプロデューサーは、ハイタッチをすると俺をスタジオへ連れていった。

そこは…。

異世界だった。


俺の緊張が一気に高まり、それからしばらくあまり覚えてないくらいドタバタと事が進んだ。

「お疲れさま」
そんな声がこだましはじめると俺は、ようやく自分を取り戻した。

(あっ時間…。)

時計を見るとまだ45分しか経っていなかった。

バイト服に着替えると
「失礼します。」
女性が入ってきた。

「これ、バイト代とうちのプロダクションの名刺…。」

振り向きながら、俺は、返事をした。
「あっ!」

そこには、朝の悪夢のデカ女がいた。

向こうも俺の表情を見て驚いていた。


「バイトってあんたなの?」
「あんたなんて言われたくないけど。」

あのデカ女に…。
1日に二度も…。
それもよりによって、モデルがうじゃうじゃいる中コイツに会うなんて…。

(今日は、仏滅か?赤口か?)

女は、ふて腐れたように話し出した。
「私、北條 織(しき)この名刺のプロダクションの社長秘書をしてます。社長が、後日またご連絡したいとの事でしたので、ご連絡先を教えて頂きたいのですが。」

朝とは別人のように冷静で物静かな様子で話してきた。

俺は、とりあえず、バイト代も入ったし、ピザの注文も取れるかもと思って、連絡先を教えた。

バイト先に戻るとたもっちゃんは、ひつこく合コンネタを求めてきた。

(最悪の1日が終わろうとしていた)

何だかとても疲れた俺は、滅多に寄らないカフェに入った。

カプチーノと灰皿をもらい席を探しているとそこには、あのデカ女…。
いや、北條織がいた。
「どうも…。」
「どうぞ」

俺は、黙って カプチーノを呑みながら煙草に火を付けると…。

そこから、無言の時間が流れた。

(厄年でもないのに…。)と思いながら今日1日濃かったなぁと笑ってしまった。

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