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サマーインパクト 2

[344] 碓氷蓮 2011-04-09投稿
二話 「蝉、さざめく。」



全く状況が把握できない。


もう平静を保つことは出来なかった。


「なっ、なんなんだよっ!俺を帰してくれよ!」


「悪いけど帰せないわ。今、国は・・・いや、世界はあなたを必要としているのよ」


必要としている、何故かその言葉が深く刺さった。


「必要・・・?俺が・・・?」


「まあ、見てなさい」


隊長らしき人物の号令に合わせて数台の戦車の轟音が重なり、耳を貫く。



弾は確実に巨大なセミに直撃した。


「嘘だろ・・・」


どこからか兵士にしては弱々しい声が聞こえる。


爆発により舞い上がった塵の間から見えるセミは健在だった。


「言ったはずよ、メガインセクトに人間の作った兵器は利かないって」


サヤの言葉を聞いた先ほどの隊長が隊員に慌てて命令する。


「か、火炎放射器用意!」


火炎放射器を手にした隊員たちはセミにゆっくりと近づく。


「発射!」


しかし紅の炎はセミには当たらなかった。


セミがかわしたのではない。


火炎がセミからそびれているのだ。


それと同時に砲撃の音をも遥かに凌ぐ強烈な音が耳を、三半規管を刺激する。


シンヤだけでなくその場にいた者全員が倒れこんだ。





「た、助けてくれ!」


男の叫び声で目を覚ます。


平衡感覚が回復してないため、ふらつきながら立ち上がる。


シンヤの視線の先には尻餅をついた兵士と巨大なセミがいる。


先ほどより近づいて、目前にいるセミに腰を抜かしてしまう。


よく見ると尻餅をついている兵士はさっきの隊長だった。


その隊長を漆黒の、感情を感じない瞳が睨み付ける。


そしてその強靭な顎が隊長を喰らう。


血が吹き出し、言葉に著せない叫び声をあげた後、男は力尽きた。


肉を、骨を引き裂き砕く音が回復しつつある耳に入る。


食べ終えた怪物の黒い目玉が次の獲物を探す。


こっちを見るな・・・!


こっちを見るな・・・!


セミと目があった。

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