明日を忘れた少女 2
――第一章――
「はぁー…疲れた」
肩に掛けてた荷物を投げやりな態度で自室の床に放り投げる。そのまま敷きっぱなしの布団にダイブし、桜木冬美は大きくため息をついた。
「こんな仕事、辞めてやる」
口から思わずこぼれた言葉は、桜木が去年の4月この職に就いてから何百回と繰り返している台詞だ。もちろん、言うだけで実行しないであろうことも自分で分かっている。だが言わなくてはやっていけない…それが桜木の職業―刑務官というものだ。現に、桜木より早く拝命した先輩達も、口癖のように言う―絶対にいつか辞めてやる、と。
「大体…公務員のクセに何でこんなキツいんだよ」
そもそも刑務官とは、刑務所にいる受刑者の改善・指導を行い、釈放時に向けての生活態度や社会の一般的な常識を叩き込むところである。それと同時に、釈放後の円滑な社会復帰に貢献できるようにする場所である。
だが、そこに勤務する職員の関係や勤務状況の実態は大変なものである。
公安職に付き物の夜勤。厳しい縦社会と女のどす黒い世界。これで愚痴の一つも言わずにやっていける人間の方が凄い。だが給料の良さから辞められない人間が多いのも事実である。
「何かもう…嫌だなぁ…」
ブツブツと独り言を呟きながら携帯電話を右手に持つ。慣れた動作でアドレス帳を開き、そこから一人の名前を引っ張り出し、そのまま電話をかける。
「今日は休みだから…多分出るかな?」
発信音からコール音に変わった受話器口の相手の様子を考えながら待つ。2回目のコール音で相手が電話に出た。
『はい』
「ただいまー。お疲れさん」
電話の相手は桜木の彼氏の中野優樹。桜木より10歳年上で、同じ刑務官の職だ。
「はぁー…疲れた」
肩に掛けてた荷物を投げやりな態度で自室の床に放り投げる。そのまま敷きっぱなしの布団にダイブし、桜木冬美は大きくため息をついた。
「こんな仕事、辞めてやる」
口から思わずこぼれた言葉は、桜木が去年の4月この職に就いてから何百回と繰り返している台詞だ。もちろん、言うだけで実行しないであろうことも自分で分かっている。だが言わなくてはやっていけない…それが桜木の職業―刑務官というものだ。現に、桜木より早く拝命した先輩達も、口癖のように言う―絶対にいつか辞めてやる、と。
「大体…公務員のクセに何でこんなキツいんだよ」
そもそも刑務官とは、刑務所にいる受刑者の改善・指導を行い、釈放時に向けての生活態度や社会の一般的な常識を叩き込むところである。それと同時に、釈放後の円滑な社会復帰に貢献できるようにする場所である。
だが、そこに勤務する職員の関係や勤務状況の実態は大変なものである。
公安職に付き物の夜勤。厳しい縦社会と女のどす黒い世界。これで愚痴の一つも言わずにやっていける人間の方が凄い。だが給料の良さから辞められない人間が多いのも事実である。
「何かもう…嫌だなぁ…」
ブツブツと独り言を呟きながら携帯電話を右手に持つ。慣れた動作でアドレス帳を開き、そこから一人の名前を引っ張り出し、そのまま電話をかける。
「今日は休みだから…多分出るかな?」
発信音からコール音に変わった受話器口の相手の様子を考えながら待つ。2回目のコール音で相手が電話に出た。
『はい』
「ただいまー。お疲れさん」
電話の相手は桜木の彼氏の中野優樹。桜木より10歳年上で、同じ刑務官の職だ。
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