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理想と現実

[277]  さくら。  2006-09-12投稿
「来ちゃった、横浜!」
寛治との思い出がいっぱい詰まった街に、一人で…。ほんとに大好きだった。好きになりすぎて苦しいこともあった。あんなに好きで四年も遠恋したのに、近くに就職したとたん、会うたびにけんかばかりだったなぁ。
別れて半年、寛治に対する思いを封印するために横浜にやってきた。
私、青山サクラ。五年つきあった彼氏を吹っ切るために横浜くんだりまで来てしまいました。
「さぁて、まずは元町、中華街から行くかな!」
昔はみなとみらいの方はまだ地下鉄、工事中だったのに。やっぱり月日は経ってるんだ。
元町をあてもなく歩き、アクセサリー店に立ち寄った。シルバーリングをみてペアで買ったことを思い出した。やっぱり一人って淋しいなぁ。中華街に行こう。そういえば、昔刑事もののドラマでよく出てたよなぁ。あんな大人なかっこいい刑事なんて現実にはいないかぁ。
私は名物の肉まん買って、山下公園の赤い靴の女の子のところへ行った。淋しいし、悲しいのにおなかは空くんだよね。こんなとき生きてることを実感する。
「おいしい、肉まん?」
ん?突然、話し掛けられびっくり!
「はぁ…」
もしかして危ない人?
私が疑ってるのに気付いたのか、その人は苦笑いした。
「急に声掛けたりしてごめんね。あまりにもうまそうに肉まん、食ってるから。家で少女じゃないよね?」私のボストンバッグに目をやる。
「違います!旅行です。」「それならいいんだ。最近多いんだ、家出少女。昨日も保護したし。」
ん?この人、刑事さん?
「俺、刑事なんだ。」
そういって警察手帳を見せてくれた。顔写真も同じだし、うそじゃなさそう。
「名前は?」
「青山サクラ。刑事さんは?」
「俺は高井優貴。どこから来たの?」
「福岡から。」
わざわざなんで?って顔して私を見返す。
「横浜が大好きでふらっと来ちゃいました。」
しれーと言っちゃった。だって元カレのこと、封印するためなんてかっこ悪いから。
なんだかナンパなのか、よくわからん刑事に声かけられて始まった横浜旅行です。

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