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空から見てる 4

[298] 莉絵 2011-06-19投稿

「一人でこんな山奥に住んでいて、寂しくないですか?」

これを聞いた後で、しまった、と俺は思った。

サエさんは一瞬目を見開いたあと、眉をひそめた。
さっきまであんなに穏やかだった顔が、不快に歪んだ。

「ウチは、好きで一人になったんじゃない。」

サエさんは低い声で言った。

「すみません、俺、無神経でした。ごめんなさい。」

「…いいの。
一番ひどいのは、あたしの両親だから。
ほんとにずっと、帰って来ないのよ。ウチを一人きり残して。」

「え?帰って来ないって…?」

(俺はてっきり亡くなったものだとばかり)


「3年以上前にね、母と父で、出掛けてくるって言ったっきり。」

「そうなんですか…。それは、どこへ出掛けたとか、何か聞いてたんですか?」

「えぇ、それがね…、『曇の道の果てを見てくる』って。」

「くものみち?」

「別名は阿曇山道。」
「あずみさんどう…それは一体…」

「終りが無いと言われてる山道よ。でもただの迷信。地図にだってちゃんと書かれてるし。
ただ、いつも濃い霧が出ていて、すごく見通しが悪い道。どこまでも登っていくような錯覚に陥る坂道で、車の事故も多いの。」


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