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見つめる先…

[514]  七海  2005-12-17投稿
 この日わたしはコイツと海に行った帰り、家には帰らないでコイツの家にそのまま泊まった。
 わたし達の予想は外れて雨は降らなかった。お母さんには…友達の家に泊まるって嘘をついた。罪悪感がなかった訳じゃないけど、あの家に帰るよりはお母さんに嘘をついてでもコイツと一緒にいたいってわたしは心から思った。
━━朝、目を開けてぐっすり寝てるコイツの顔を見つめてたら、ムカついた。けど、すごく可愛くて愛しい…。赤ちゃんみたい。愛してる…。
「おはよ。遅刻しちゃうよ?」「今何時?」「8時。」「はぁ?マジで?遅刻する!!」「だから何回も起こしたのに…(笑)」
━━急いで階段を下りてく後ろ姿。コイツを殺したいほど愛してる自分に気付いたのは、何故かこの時だった…。コイツと一緒にいられる以上に幸せなことなんてない。そう確信してる。
 親が離婚するなんて時間の問題だった。
「ねぇ、離婚するならなんで結婚するんだろ?」「難しいな。」「子供のことはどうでもいいのかな?」「それも難しいな〜。」「ねぇ、なんでわたしはあの人の子供なんだろ?」「……。」「なんでだろうね。不思議。」「…不思議の国のアリスだな。」「アリスはきっと不思議の国からは帰って来れないね。」「……。」
━━『不思議の国のアリス』っていう童話がどんなのだったか覚えてないけど、本当にアリスは帰って来れない気がした。………。
━━すごく長い静かな時間。「…死ぬ?」━━…一瞬。本当に一瞬、時間が止まるのがわかった。
「俺が一緒に死んでやるって言ったらお前どうする?」「…。」「…冗談だよ!アリスは帰って来れる。って俺はそう思うよ?」………「アリスは…わたしが…迎えに行くよ。」
━━怖い。
「なら俺は豪華ディナーでも作って待ってる。」
━━恐かった。二人でどう死のうか本気で考えた自分。本気でもないことをまるで本気みたいに言うヤツ。いつコイツに殺されるだろ?でも、コイツに殺されるなら本望だ。

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