奈央と出会えたから。<433>
* * * * * *
冬休みが終わり、
3月期が始まった。
1月も半ば過ぎ。
北海道では、一番寒い時期かも知れない。
『出欠をとる。
赤西―。相葉―。大野―。亀梨―。』
渋川の顔を見るのも久しぶりだ。
トレードマークだった銀縁眼鏡が、
去年の暮れから、セルフレームに変わった。
フレーム自体はオシャレなんだケド、
渋川には、やはり銀縁眼鏡の方が、しっくりくる様な気がする。
『北岡――
北岡 聖人?!
来てるかぁ?!』
聖人。新学期は、いつも遅刻だからなぁ。
今朝も“わりぃ。先行っててメール”来てたし。
『センセぇ。アイツが新学期早々、遅刻しないワケないじゃん?!
アイツの唯一の弱点は“ 朝“なんだからサ。』
タツヤの一言で、教室内に、どっと笑いが起こる。
『今年は、北岡にも、もう少し真面目になってもらわんとな。
みんなにも聞いてもらいたいが、
今年は真剣に受験生としての自覚を持ってもらわんと、
中学校生活最後の年だからな。
私も、みんなの内申書には、出来るだけ良い事を書いてやりたいしな。』
去年の秋の合唱コンクール以来、
渋川は変わった。
変わったのは渋川だけではない。
クラスメイトで、聖人と犬猿の仲だったタツヤの態度も。
『本当は全員揃った所で発表したかったが、北岡には後で言う事にしよう。
私は来年、みんなが卒業すると同時に、この学校から離れる事になった。
新しい赴任先はまだ未定だ。
だがその前に、みんなもすでに知ってのとおり、今学期いっぱいで秋田谷は帯広の学校へ転校する。
秋田谷と一緒に過ごせるのも、あと少しの期間だが、
秋田谷のこれからのステップアップに向けて、
みんなで気持ちよく送り出してあげましょう。』
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