オバケ5
僕が初めてオバケに声をかけたのが8月の半ばで、それから6ヶ月が経ち、季節は冬になった。
外では蝉も鳴いていなければ、木々に赤い葉も付いていない。
その日、いつもの居酒屋は珍しく客でいっぱいだった。
オバケはまだ来ていないようだ。
「こんばんは」僕は店のオヤジに話し掛けた。「今日は混んでるね」
「いつもこうだといいんだがね」
ほとんどの客は楽しそうに酒を飲み、店の中はそういった雰囲気で満たされていた。
時計が今日の終わりを告げる時刻になると、客たちの半分以上は覚束ない足どりで、帰宅の途についた。
彼らが店の戸を開けるたびに、冷たい空気が入ってきた。
店の中の客は、ついに僕だけになった。
戸が開き、冷気と共にオバケが入って来た。
「日本酒と焼き魚」オバケは言った。「おすすめの魚を焼いてくれ」
「あいよ」
魚を焼くいい匂いが店中に広がった。
今日は随分遅かったな、とオバケに言った。
「俺にだって」日本酒を一口飲んだ。「用事の1つや2つくらいあるさ」
そういうとオバケは少し笑った。
外では蝉も鳴いていなければ、木々に赤い葉も付いていない。
その日、いつもの居酒屋は珍しく客でいっぱいだった。
オバケはまだ来ていないようだ。
「こんばんは」僕は店のオヤジに話し掛けた。「今日は混んでるね」
「いつもこうだといいんだがね」
ほとんどの客は楽しそうに酒を飲み、店の中はそういった雰囲気で満たされていた。
時計が今日の終わりを告げる時刻になると、客たちの半分以上は覚束ない足どりで、帰宅の途についた。
彼らが店の戸を開けるたびに、冷たい空気が入ってきた。
店の中の客は、ついに僕だけになった。
戸が開き、冷気と共にオバケが入って来た。
「日本酒と焼き魚」オバケは言った。「おすすめの魚を焼いてくれ」
「あいよ」
魚を焼くいい匂いが店中に広がった。
今日は随分遅かったな、とオバケに言った。
「俺にだって」日本酒を一口飲んだ。「用事の1つや2つくらいあるさ」
そういうとオバケは少し笑った。
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