月色。?
第四章
その日も私はブランコにいた。もう、私の特等席だった。平日は誰も来ない公園だから、他に座る人はいないけど。
前のように、鎖に体重を掛けて、首を仰け反らせる。後ろの木立の葉の間から、日の光が漏れていた。木漏れ日って、こんな身近な所でも感じられるんだ、って思った。ここは住宅街。公園の木々はそこまで多くない。
その時、不意に発作が来た。喉が、ひゅう、と鳴る。息が、上手く、吸えない。苦しい。膝が、震え始めた。真ん中がずきずきする。痛くてたまらない。体を腕で抱きしめても、どっちも止まりそうに無かった。
「アスカ?どうしたの!」
その時キョウの声がしなかったら、私は死んでいたかもしれない。素直にそう思った。
キョウの声で我に返り、カバンから急いで薬を出して飲んだ。
「そんなに急いで飲んだらダメだ!」
キョウは、私の背中をさすりながら、耳元で、ゆっくり、ゆっくり…と、呪文のように唱えていた。私の呼吸も、膝の痛みも、その呪文に癒されるかのように、治まっていった。
「……ありがと。」
「もう、大丈夫?」
物凄く心配そうな彼の顔に、私は安堵した。
「うん、大丈夫。」
少し弱めの笑顔を作って言ってみた。
「ん。良かった。」
キョウは心の底から安心した顔をしてくれた。
「今のが、病気の発作?」
「うん。本当の病名は解らないんだって。」
「そうなんだ。治しようがナイね…。」
「そう。だから薬も鎮痛剤とかしか無い。」
「そっか…。」
「治るかどうかも解らないから、どれ位この命が保つかも解らない。」
「そうだね。」
「酷な話をしてるよね。ごめん。」
「んん。本当の話でしょ?」
「うん。」
「じゃあ、受け止めるよ。」
「…ありがとう。」
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