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悲愴の水使い?

[915]  ROCO  2005-03-01投稿
「助けに行かなくては。」
サラが地面にあいた大穴をのぞいた。
「俺も行くぜ!」
「それはダメ」
「な、なんでだ?」
「魔法も使えないあなたが来ても足手まとい」
サラはひとり大穴に入る。
「俺だってな、自衛のために剣の使い方ぐらいは知ってるんだぜ!」
「あの妖魔にどこまで剣が通用するかはわからない。」
「な、なんだと!」
無理矢理に大穴に入ろうとするカイを町人が止めた。
「カイ、ここは魔法使いさんに任せよう。」
「何言ってやがる!大事な町の仲間が連れていかれたんだぞ!」
「お前も大事な仲間じゃないか。わざわざ死に行くような危険をおかすことはない。」
「お前らそれで平気なのか!」
頭に血が上ったカイをサラがなだめるように声をかけた。
「皆の言う通り。あなたが危険をおかす必要はない。」
「だったらお前はいいって言うのか!」
「そう。私はいいの。」
あっさりと言われてカイは言葉を失った。そしてとどめをさすようにサラが言う。
「あなたが死ねば悲しむ人がいる。でも私は違う。私がいなくなっても誰も困らない。私自身も失うモノは無い。」
いつもの無表情さがいたいけに感じる。
「最後にひとつ。もし夕方までに私が戻らなければあきらめてこの土地を去りなさい。」
ひとり大穴の奥に消えていくサラを誰も止めないことにカイは腹がたった。
そして、何もできない自分にも腹がたった。
町の人間が町から出ていく準備を始めた。カイ以外は誰もサラとアリスの帰りを待っていない。
陽はしだいに傾き、空が赤く染まっていくが2人はまだ帰ってこない。
「カイさん…もう無理だよ。あきらめて出ていく準備をした方がいいよ。」
町人のひとりが遠慮がちに声をかける。
「……」
カイは黙って大穴を見つめている。もはや怒りが頂点に達しようとしていた。
町のほとんどの人間は準備を終えていた。
「お前ら…ホントにこれでいいのか?」
すると町長がやってきた。やはり出ていくつもりらしく、準備を終えている。
「カイ…いい加減に準備をしなさい。もう夕方だ…2人は帰らない。」
「そんなこと分からないだろう!」
「カイ!」
「もういい!俺がひとりで行く!お前らはそうやって逃げてればいいっ!」
カイはひとり大穴に向かって歩きだした。
「ま、待ちなさいカイ!」
しかしカイが止まることはなく、大穴の奥に消えていった。
残された町長や町人はカイの言葉が頭から離れず、その場から動けずにいた。

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