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子供のセカイ。253

[314] アンヌ 2011-08-19投稿
二人は耕太の想像の力で、「白の乙女」へと化けているのだ。
しかも美香が必死に頭を悩ませて考案した、オリジナルの乙女である。周囲の者たちに溶け込み、なおかつまったく同じコピーにならないように工夫してある。舞子が次々に白の乙女を生み出しているという情報を街の住民から得たことから、新入りが二、三人いても怪しまれないと踏んだためだった。
そしてその策は成功した。誰ひとり見慣れないはずの美香と耕太を気にも留めず、ただちらりと自分たちと似た容姿であることを確認し、後は自分の役目の方に意識を集中させている。美香たちの分身が街中に溢れ返っていることが、必要以上に彼女らを焦らせているらしい。
「では、行きましょう」
リーダー格らしいソラという乙女の声を合図に、乙女たちは風に吹きちぎれた花びらのように、しなやかに走り出した。美香と耕太もばれないよう、同時に走り出すが、本物の乙女たちのスピードに叶うはずもなく、あっという間に取り残されてしまう。
「……今のでばれたりしねえかな?」
「平気よ。皆、私たちのことで頭がいっぱいだもの」
二人はホールの中程で立ち止まると、息を弾ませながら言葉を交わした。その後、美香はちらりと耕太を横目に見た。
「それより、その格好でその口調は気持ち悪いわ。なんとかならないの?」
「るせえ、女言葉なんかしゃべれっかよ!」
耕太が美しい乙女の姿でぺっと大理石の床に唾を吐くのを、美香は呆れたように眺めた。しかしすぐに気を取り直し、また前へ向かって歩き始める。
「時間がないわ。早く囚われてるミルバを捜し出して、舞子のところへ行かなきゃ」
「場所も特定できてないしな……。手当たり次第、全部の部屋を覗いて行くしかねえか」
耕太がぼやくのを背で聞きながら、美香は思考を巡らせた。
(確かに、ミルバ本人も自分の『頭』の正確な位置を知らないと言っていたわ。でも、舞子の部屋と覇王の執務室が城の最上階に位置しているなら、そこからミルバの部屋の位置を割り出せないかしら……?)
前々からずっと考えてきたことではある。しかし、可能性のある階数は多く、やはり的は一つには絞りきれない。
「とりあえず、地下を一通りさらいましょう。そして地下が終わったら、最上階の二階下から始めるの」
耕太は怪訝そうな声を出した。
「地下はわかるけど、最上階の二階下っていうのは?」

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