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悪魔の天使 (29)

[311] 暁 沙那 2011-08-21投稿
「人のものに何してんの?」

声はどこか呆れたような色を含んでいた。

「誰だ?」

リアの手を掴んでいる男が低い声で訊ねた。

捕まれている手がすごく痛い。

生理的な涙が零れた。

「俺はレクス…まあいいや。うん。その子の…リアの主人だよ?」

それを聞いた男の手により力が入った。

「――っ!!」

痛みで感覚が消えそうだ。

リアは唇を噛み、痛みを通り越そうとする。
涙が絶え間なく流れた。

それを見たレクスの目に険が宿った。

「リア、明らかに痛がってるよね?放してあげなよ。」
「そんなことわしの知ったことではないわ!これは耐えればよい。どうせまた、これ以上の屈辱を味わうのじゃ。今も次も同じ。」
「そうはならないよ。これからはずっと俺が守ってあげるから、その子を。」

男がチッと舌打ちしたのがリアに聞こえた。

それと同時に警報が鳴り響く。

「さっさと出ていかねば、これがどうなっても知らんぞ。」

手が首に回された。

「――っく…!……あ……。」

首を絞めている手に体重をかけられて、息が詰まった。

リアは自由になった手で必死に押し返そうとする。
しかし、手に力が入らない。

(そろそろ…意識が…飛びそう……。)

目の前が霞む。

もう涙でぼやけているのか、意識が飛びかけているのかも分からない。


ただただ身体から力が消えるのが分かった。

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