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幻想怪奇談・短編

[709] にゃんぷち 2011-08-30投稿

眠れないんだよな

熱帯夜、僕は全国的に蔓延してる「節電」を無視できずに何とか扇風機で凌いでいた。

手元の目覚ましは深夜の1時を指している。

明日、バイト早番なんだけどなあ

苛立ちはますます眠気を遠ざけて、僕はため息と共に起き上がった。

かといって、テレビをつける気にもなれない。

そういや、アレあったな

昨日、バイト仲間に借りたCDがあったっけ。

サカナクションの新曲。

まだiPodには入れてないから、ウォークマンを引っ張り出す。

暗闇でごそごそしてるうちに目が慣れてきた。

鞄から袋を取り出して、CDを掴み…手を止めた。

あれ、これ…サカナクションじゃないじゃん。

ちぇっ、なんだよ、Mステで聴いて良いと思ってたから楽しみにしてたのに。

目を凝らしてみる。

黒いパッケージ、なんか古そうで汚れている。


何なんだこれ。

取り合えず、仕方ないからウォークマンに入れてイヤホンをつけた。


再生。



…。


静寂。


なんだよ、なんも入ってないのか?


目を閉じた。

まあいーや、このまま寝ても…



カッ…



ノイズ、小さな、雑音。


…ザザ…ン………ク…ル




ノイズに混ざって、何か…声か?


ザザザザザ…

ザザ…メテ…ザザ…ンデ…


なんだ、なんて言ってる?


目を閉じたまま、ぼんやりと…小さな囁きを追う鼓膜


ザザザザザ

ザザザザザ



「案外、頭って重いな」



唐突な声。

同時に
閉じていた瞼の裏に、


両目から血を流し、僕を見つめる女の映像がフラッシュのように瞬いた。


「うわあっ」




僕は飛び起き、イヤホンをむしりとった。


今のは…


今の声は…




次の日、僕はそのCDを返した。

「どうでした?」

僕が差し出したCDを彼は受け取って、微笑んだ。

それは僕が頼んでいた通りの真新しい新曲のCD。


でも僕は、昨日のことが夢や錯覚ではないことを知っている。

「なあ」

僕は彼に聞きたい事がある。

「お前の彼女…最近来ないね?」


彼はくるりと背を向けてCDをしまった。


それから、振り返り、笑った。


「彼女がいると、意外なことに気づけるんですよね」

それはそうなんだろう。


例えば

彼女の頭が、意外と重いなんてことに…彼は気づいたんだろう。



僕は考えていた。


彼の内側について


色々考えていたんだ。








感想

  • 41567:つまんねー[2011-09-24]
  • 41613:お前はなんなの↓。本当にうざい、きえろ。[2011-10-23]

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