子供のセカイ。256
二階へ続く螺旋階段の前で、美香は胸をドキドキさせながら耕太を待った。
臣下たちの上を下への大騒ぎに、ついに城兵が動き出したらしく、さっきから頻繁に白の乙女の姿をした美香の元へやって来ては、指示を仰ぐのだ。兵の配置や役目などからっきしな美香は、どう命令を下せばいいのかわからず、始終怒ったフリをして怒鳴りっぱなしだった。そうすると、皆怯えたように頭を下げて下がるので、なんとかばれることはなかったが、いつまでごまかしが効くかは甚だ疑問であった。
半分、本当の意味で苛々しながら腕組みをしていると、不意にすぐ脇でふわりと風が起こり、気づいた時には、そこには耕太が立っていた。
白の乙女の姿ではなく、短髪の元気そうな少年――正真正銘、耕太の姿で、である。
「おう、地下終わったぜ!やっぱりミルバはいなかっ……」
最後まで言わせず、美香は思い切り耕太の口を塞いだ。白の乙女の姿のため、自分より随分背の低い耕太を脇に抱えるような体勢になる。
何をするんだ、と耕太が声を荒げかけたところで、二人はあっという間に不安げな顔をした臣下たちに包囲されてしまった。
「おお、いつの間に!賊を捕らえたのですね!」
「流石は白の乙女様だ!」
「これでやっと安心できます――」
大勢の「敵」に囲まれて、耕太は一瞬にして体中の血液が凍りついた。彼らの視線が自分に向けられていることから、ようやく想像の力が解けてしまっていることに気づく。
ヤバい。
さっと顔から血の気が失せた耕太を見て見ぬフリをして、美香は群集を蹴散らすように大きく手を振った。
「まだよ!手配書にもあったでしょう。もう一人、少女が残っているわ。捜索は続行、全力で探しなさい!」
きっぱりとした態度や凛とした声に、たちまち浮かれ気分だった臣下たちは気を引き締め直したようだった。それだけでなく、長い間捕まえられなかった手配書の賊を捕らえたということもあり、美香に対する信頼がどっと増したようである。
皆、口々に応諾の意を唱えると、再び散り散りになって侵入者の少女――美香を捜し始めた。
またもや蜂の巣をつついたように騒がしくなる城内で、美香は少し肩を震わせながら、ほーっと長い息を吐いた。
「……わりぃ、美香。俺どうすれば――」
萎縮したように小さく呟いた耕太に対し、美香はぴしゃりと言い放った。
臣下たちの上を下への大騒ぎに、ついに城兵が動き出したらしく、さっきから頻繁に白の乙女の姿をした美香の元へやって来ては、指示を仰ぐのだ。兵の配置や役目などからっきしな美香は、どう命令を下せばいいのかわからず、始終怒ったフリをして怒鳴りっぱなしだった。そうすると、皆怯えたように頭を下げて下がるので、なんとかばれることはなかったが、いつまでごまかしが効くかは甚だ疑問であった。
半分、本当の意味で苛々しながら腕組みをしていると、不意にすぐ脇でふわりと風が起こり、気づいた時には、そこには耕太が立っていた。
白の乙女の姿ではなく、短髪の元気そうな少年――正真正銘、耕太の姿で、である。
「おう、地下終わったぜ!やっぱりミルバはいなかっ……」
最後まで言わせず、美香は思い切り耕太の口を塞いだ。白の乙女の姿のため、自分より随分背の低い耕太を脇に抱えるような体勢になる。
何をするんだ、と耕太が声を荒げかけたところで、二人はあっという間に不安げな顔をした臣下たちに包囲されてしまった。
「おお、いつの間に!賊を捕らえたのですね!」
「流石は白の乙女様だ!」
「これでやっと安心できます――」
大勢の「敵」に囲まれて、耕太は一瞬にして体中の血液が凍りついた。彼らの視線が自分に向けられていることから、ようやく想像の力が解けてしまっていることに気づく。
ヤバい。
さっと顔から血の気が失せた耕太を見て見ぬフリをして、美香は群集を蹴散らすように大きく手を振った。
「まだよ!手配書にもあったでしょう。もう一人、少女が残っているわ。捜索は続行、全力で探しなさい!」
きっぱりとした態度や凛とした声に、たちまち浮かれ気分だった臣下たちは気を引き締め直したようだった。それだけでなく、長い間捕まえられなかった手配書の賊を捕らえたということもあり、美香に対する信頼がどっと増したようである。
皆、口々に応諾の意を唱えると、再び散り散りになって侵入者の少女――美香を捜し始めた。
またもや蜂の巣をつついたように騒がしくなる城内で、美香は少し肩を震わせながら、ほーっと長い息を吐いた。
「……わりぃ、美香。俺どうすれば――」
萎縮したように小さく呟いた耕太に対し、美香はぴしゃりと言い放った。
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