子供のセカイ。261
それがミルバの本体であることを祈り、美香も素手で懸命に手伝った。耕太が空けた穴に手をかけ、ばりばりと木片を剥がしていく。掌が切れて血が滲んだが、構っている場合ではなかった。
そうしている間にも、乙女たちはあっという間に二人に肉薄した。
耕太は振り向き様に、「喰らえ!」と叫ぶと、今度は右手の剣を振るう。そこから氷の息吹が吹き出し、三人は身をねじって回避したが、避け切れなかった二人の乙女が、たちまち彫刻のように凍りついた。
「こっちは俺がやるから、あいつらを頼む!」
血だらけの手を見兼ねたのか、早口で叫んだ耕太の言葉が一瞬理解できず、美香は顔をしかめた。武器もなく、想像の力さえ使えない美香に、戦うことなどできないはずだ。
見ると、耕太が右の剣の柄を美香の方に差し向けていた。
唐突に意味がわかり、美香は驚愕に目を丸くして耕太を見返す。
「こいつは魔法剣だから、願えば氷が出せる。――お前なら戦えるだろ?」
悪ガキ仲間にそうするように、耕太がにやりと笑いかけてくる。
美香は不意に、これまでの自分の戦歴を思い出した。
まがまがしい力を持つ舞子の想像物たちを相手に、美香はたった一人で戦ってきたのだ。夜羽部隊のように特殊な強さを持つ連中ならともかく、白の乙女程度ならば――。
(きっと倒せる…!)
想像の力を失ってからは逃げることのみを念頭に置いてきた美香にとって、耕太の言葉は起爆剤となった。――自分は戦える、という自信を取り戻すための。
「やってみるわ」
美香は少し微笑むと、力強く剣を受け取った。ぴりりとした痛みが掌に走るが、すぐさま残りの三人の乙女に向き直り、剣を構える。
乙女たちは互いに目配せを交わすと、しなやかな身体をバネにして高らかに宙に散った。バラバラな方向から攻撃することで、美香を撹乱するつもりらしい。
美香はふー、と息を吐くと、焦らず、かつ的確に剣を斬り払った。剣の性能は知られてしまったため、不意打ちはできないが、それならそれでやれることがある。
白い冷気が一人の乙女の右足を掠めるが、易々と避けられてしまう。美香は気にせず、ただ床に一筋の氷の線が伸びるのを確認し、乙女が伸ばしてきた左手をかい潜り、再び今度は他の二人に向かい剣を振るった。
そうしている間にも、乙女たちはあっという間に二人に肉薄した。
耕太は振り向き様に、「喰らえ!」と叫ぶと、今度は右手の剣を振るう。そこから氷の息吹が吹き出し、三人は身をねじって回避したが、避け切れなかった二人の乙女が、たちまち彫刻のように凍りついた。
「こっちは俺がやるから、あいつらを頼む!」
血だらけの手を見兼ねたのか、早口で叫んだ耕太の言葉が一瞬理解できず、美香は顔をしかめた。武器もなく、想像の力さえ使えない美香に、戦うことなどできないはずだ。
見ると、耕太が右の剣の柄を美香の方に差し向けていた。
唐突に意味がわかり、美香は驚愕に目を丸くして耕太を見返す。
「こいつは魔法剣だから、願えば氷が出せる。――お前なら戦えるだろ?」
悪ガキ仲間にそうするように、耕太がにやりと笑いかけてくる。
美香は不意に、これまでの自分の戦歴を思い出した。
まがまがしい力を持つ舞子の想像物たちを相手に、美香はたった一人で戦ってきたのだ。夜羽部隊のように特殊な強さを持つ連中ならともかく、白の乙女程度ならば――。
(きっと倒せる…!)
想像の力を失ってからは逃げることのみを念頭に置いてきた美香にとって、耕太の言葉は起爆剤となった。――自分は戦える、という自信を取り戻すための。
「やってみるわ」
美香は少し微笑むと、力強く剣を受け取った。ぴりりとした痛みが掌に走るが、すぐさま残りの三人の乙女に向き直り、剣を構える。
乙女たちは互いに目配せを交わすと、しなやかな身体をバネにして高らかに宙に散った。バラバラな方向から攻撃することで、美香を撹乱するつもりらしい。
美香はふー、と息を吐くと、焦らず、かつ的確に剣を斬り払った。剣の性能は知られてしまったため、不意打ちはできないが、それならそれでやれることがある。
白い冷気が一人の乙女の右足を掠めるが、易々と避けられてしまう。美香は気にせず、ただ床に一筋の氷の線が伸びるのを確認し、乙女が伸ばしてきた左手をかい潜り、再び今度は他の二人に向かい剣を振るった。
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