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悪魔の天使 (39)

[341] 暁 沙那 2011-09-23投稿
廊下を走る音がする。

「レクス!」

さっきまでそこにいたのにもういない。

そのことに内心焦る。

「レクス……。どこにいるの?」

(今すぐ会って伝えたいのに。)





どれくらい探しただろうか。

またあの場所に来ている。
(ゼイルに来ちゃ駄目だって言われたばっかなのに……。)

真っ暗で薄ら寒い空間と一人という心細さについ涙ぐむ。

「ここじゃないかもしんないし、もう帰ろっかな……。」

弱音が悲しく木霊した。

それさえも怖くて足が止まった。

普段なら行き帰りは灯りがあって明るいのに、今は真っ暗。

「もうやだ……。」

涙を乱暴に拭い、本来の目的も忘れて呟く。

その一瞬、後ろから人の気配がした。

「――ゃっ!?」

口を布で塞がれる。

見上げると過去に何度も見たあの人だった。

「黙ってろよ。リア。」

恐怖でぎこちなく頷くと同時に涙が零れ落ちる。

「いい子だ。」

壁にゆっくりと押し付けられ完全に身動きを取れなくされる。

それと同時に激しい眠気が襲ってきた。

(睡…眠…薬……?)

リアの思考もそこまでで深い眠りに落ちた。





『リア、俺が守るから。だからリアも――。』

レクスに伝えられなかった。

早く伝えないと……。

エリーにレクスが取られる前に……。

早く……。

好きだよって。

私もあなたを愛してるから心配しないでって……。

――レクスが好き……。





幸せな夢。
ずっと見ていたかった。

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