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悪魔の天使 (42)

[342] 暁 沙那 2011-09-25投稿
今日もリアは愛想笑いを浮かべ男のやりたいようにさせた。

そんなリアの脳裏に浮かぶのは誰か分からない男の人。

ひどく懐かしくて愛おしい。
それと同時に果てしない不安が胸を襲う。

怖くて布団に潜った。



ある日、ふと窓の外を見た。

カップルだろうか。

しばらくイチャイチャした後口づけを交わした。

彼女はとても幸せそうで……。

記憶が呼び起こされる。



『リア。』

優しく名前を呼ばれ、優しく髪を撫でられ、暴力で自分を制そうとなんてしなかった、全てを優しくしてくれた彼。

大好きだった。

顔も思い出せない彼だけど、好きだ。

今でも、愛してる。

あの男に抱かれた自分を拒絶されたくなかった。

あの優しい手で、声で、撫でてくれない、呼んでくれない。
それが怖かった。





思い出したい!





「レ…ク……?」

涙が零れた。

それを後ろから拭われる。

すぐに誰だか分かった。

「やっと見つけた……!リア、会いたかった!」

リアは一つ大きく頷くと身体をレクスに預けた。

久しぶりに交わされる愛のこもった口づけ。

「私、あの人に……。」
「いい。リアであることに変わりはない。」

もう一度口づけを交わした。

「帰ろう?」

口づけを解いたレクスが唇のすぐ近くで囁いた。

息が当たったのがリアを戦慄かせた。

「んっ……!」

身体を強張らせるとレクスが低く笑ったのが分かった。

「どうしたの?こんなことで感じるようになったとか?」
「違っ……んっ……!」

腰の辺りを微妙な力加減でくすぐられつい言葉を切った。

「止めっ……!」

レクスは優しく微笑むと手を離した。

それに物足りなさを感じる。

「ねえ、ホントにもうおしまいにしちゃうの?」
「だって止めて欲しかったんでしょ?」
「それは……。」
「嘘。また今度たっぷりお仕置きしてあげるから今は我慢ね。」

リアはコクリと素直に頷いた。

その様子にレクスはリアの髪を撫で、唇には自分のそれを重ねた。

リアもゆっくりと瞼を落とす。

二人は何度も口づけを交わした。

失った時間と記憶を取り戻すように。

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