光(4)
幸せな日々は突然壊される。
ハルはまだかな。
わくわくしながらいつもと同じ場所でまっていた。
じゃり、と靴の音が聞こえた。
音のするほうにぱっと顔をあげるとそこには大人たちの姿があった。
まだ明るいうちから来るのは珍しかった。
今回の暴行は長かった。
痛く、苦しい。
そのなかで何よりも願った。
お願い、ハル。今日はこないで。
お願い。
「ソラ!?」
大人たちの視線が集中するそのさきに、ハルがいた。
嫌な予感がした。
大人たちの標的がハルにうつるのがわかった。
1人、また1人とあるきだす。
「あ…あぁ…」
ハルは恐怖のあまり声がでていなかった。
そして、、
ドカっ
鈍い音が響き、ハルが血に染まってゆく。
「や…めろ」
ねそべるからだをよじらせる。
力がはいらない。
動け、うごけ、ウゴケ!!
僕の体なんだから、ゆうことをきいてくれっ!
血だらけの体を引きずり、走る。
もう体は限界をこえていた。
それでも、走った。
ハルの周りにいる大人につかみかかった。
「そ…ら」
弱々しい声が聞こえた。
僕が大人相手に、勝ち目のまったくない勝負を挑むのには十分すぎる理由になるものだった。
大人たちの標的が僕に変わる。
「ハル、にげて」
ハルの顔が歪んだ。
「でも、ソラが…」
「にげろっ!!」
血だらけの体をふるわせ、ゆっくりおきあがる。
「…ソラ…」
「はやくっ!!」
ハルが走り出した。
ドカっ
鈍い音と同時に鋭い痛みが走る。
ハルはうまく逃げてくれるだろうか。
それだけが心配だった。
…ル
…ラ…ソ…ラ
「ソラ…ソラ!ソラ!!」
…ハル?
目をゆっくりあける。
ハルの顔が見えた。
「ソラ!!」
目には涙が溢れていた。
ざわざわと周りから声が聞こえる。
「君、大丈夫かね!?」
僕のことか…?
頷こうとした。
けど、力がはいらなかった。
あぁ、そうか。
僕は、もぅ…
「ソラ!?…ソラ!しっかりしてっ!!」
ハルが、泣いてる。
やだな。
笑ってほしいのに。
全部の力を右手にこめる。
手をハルの頬までのばし、そっとふれる。
「ソラ!」
その手をハルがつかむ。
あたたかい。
ハル、お願い。
最後に、見たいんだ。
僕に見せてくれないかな。
「…ハル、笑って」
僕はうまく笑えてただろうか。
ハルは顔を歪ませて、笑った。
「…ハル、僕は…きみを、愛してる」
ハルは微笑みながら泣いていた。
そして、それが僕の見た最後のハルだった。
生まれてから探していた僕という存在をあたえてくれて、ありがとう。
愛する喜びを教えてくれて、ありがとう。
僕にとって君は、光でした。
キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを知らせるチャイムがなる。
「ふぁ〜あ…」
昼か。
「はらへったなぁ…。」
空を見上げる。
きれいな青空だ。
「俺とは全然にてねーな」
笑いながら目を閉じる。
もう一度ねよう。
「わっ。先約がいた」
体をおこして声がするほうにふりかえった。
そこには同い年ぐらいの女の子がいた。
手にはなぜかキャンディーをもっていて、
「ねぇ、お腹すかない?」
END
感想
- 41602:偶然一から四まで見つけ読みました。素敵な物語ですね…[2011-10-16]