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カーニバル!♭4

[408]  四十万  2005-12-18投稿
杞李は窮地に立たされていた。影武者に今まで遭遇してこなかったわけではないのだが、目の前にいる五人は精巧すぎた。全てにおいて統一されている。どの部分をとっても申し分なく、本当に見分けが付きにくい。
「知らないのか?我々にぬかりはないのだ」
「私の影武者は幼少の頃から育て上げてきた傑作ばかり」
「全てにおいて似ているのだ」
「そんな私の元へ一人で乗り込んで来たお前は、何者だ」
「答えた方が身のためだろうが、どうだ」
杞李は五人を見渡した。動く気配はない。雰囲気に余裕が感じられる。
「私は…」杞李が口を開こうとした。しかし、すぐにつぐんだ。彼女は背中に何かが迫って来るのを感じ取ったのだ。間髪入れずに日本刀を引き抜いた杞李は、躊躇なく相手に振り下ろすが、受け止められてしまう。
「くっ」
杞李の刀は素手で受け止められていた。それを見て杞李は口をきつく結ぶ。相手のナイフが鋭く空を切った。それを紙一重で回避したが、今度は治療針が数本飛んで来た。目の端でそれを捕えた杞李は刀を真横に振り抜き弾き飛ばして難を逃れる。しかし、いつの間にか杞李は二人に挟まれながら刀を振るっていた。この状況は最悪だ。ただでは済まされない確率は高いうえに、生きて帰れる可能性は低い。しかし、ここで逃げ帰る事は許されない。それは今の状況よりも確実に杞李の死を呼び寄せる。杞李は死について考えた事がなかった。だから、口を動かした。
「死ぬ前ってこんな感じなんでしょうか」掠れ声に近いぐらい、本当に小さな声だったが、彼の耳には届いた。
「そうだとするのなら、お前の人生の終わりはとてつもなく下らないな」三人の戦いを傍観していた一人が言った。杞李の表情が、目に見える変化を遂げた。覇気のなかったけだるげな瞳に、むき出しの殺意がこもった。
「そうですよね。こんな簡単に私の人生は終わるんですよね。所詮私は」刃が空を断ち切った。
「落ち零れなんです」
彼女の手から日本刀が消えた。→ツヅク

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