ボクは女の人に尋ねた。
「不思議だな。真っ暗な何もない空間なのに、なんだか、暖かい気持ちが、ボクを包んでくれています」
女の人は、そっとボクの頭を撫でてくれたんだ。
ボクは嬉しくなって、ボクもニッコリ笑ったよ。 何だか暖かくて、懐かしい感じだった。
こんな気持ち、遠い昔に。
「・・！！お母さん！？」ボクは思わずつぶやいた。
「あなたも、お母さんのお腹の中で、こんな風にして産まれるのを待っていたのよ。優しいお母さんの愛情に守られながら。」

「そっか。そうやってボクを産んでくれたんだね。お母さんは。」
ボクは嬉しさでいっぱいになった。
お母さんから、こうやって命をもらったんだ。

「あなたの命は、こんな風に大事に大事に育まれ、やがて、外の世界に産まれでていくのよ。
列車は暗い世界をまもなく抜けるわ。
その先にある光の世界へ、進んでいくの。」

窓の外を見ると、暗闇がいつしか後の方に流れ、白みがかった光が、少しずつ黒い空と混ざりあって、青い薄いベールの様な、まだ未明の夜明けみたいな空に変わってきた。
「明るくなってきた」そう言って前を見ると女の人は、もういなかったんだ。

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