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幸運の女神-第二部 10

[399]  朝倉令  2006-09-15投稿


俺、倉沢諒司は、品川恵利花の中に存在する『女神』フローリアの言葉に聞き入っていた。


(と言っても、テレパシーというヤツだが…)



《あたしは、人間界に降臨する最後の神界の者、という事になりますが…》


「最後の?  君で終わりってことなのかな?」



女神フローリアが少々言い淀んだあたりで、俺は問い掛けてみた。



《はい。 …それで、実はあたし、まだ一人前じゃないものですから。

お恥ずかしい話ですけど、神界の力を制御するのには天使達の補助が必要なんです》



そう言った後で、ちょっとうつむき加減にはにかむ笑顔を見せた。



(うわぁ、可愛いなァ…)


心がフワッと暖まる笑顔に魅了され、思わずこちらまで微笑んでいた。



《ありがとう。 あなたも、素敵な笑顔ですね》


「い、いえ、…どう致しまして」



いきなり礼を言われ、思考が筒抜けだったのを思い出す間抜けな俺…


相手が『神様』なのをすっかり忘れていた。



《この子は、あなたとの出会いによって過酷な運命をまぬがれました。

本人に成り代わって、ここにお礼申し上げます》


「は、はァ…どうも」



どう見ても十歳くらいの少女に「この子」呼ばわりされた当人は、相変わらず、幸せそうな寝息を立てている。




女神フローリアは感謝の言葉を残し、元の柔らかな光へと姿を変えて、エリカの体に‘スーッ’と溶け込む様に同化していった。



(夢… じゃないよな?)



そんな事を思いながらエリカの寝顔を眺めていると、急に目がパチッと開いた。


俺とまともに目が合い、彼女がほんのり頬を染める。



「…ひとの寝顔見てるなんて、趣味悪いよ?リョージ」

「いーや、姫君の寝顔見られて光栄だな」



初めてエリカが泊まった時は、結局朝まで話し込んでいたのだ。



「も〜、……意地悪」



照れ隠しにプイと横を向いた品川恵利花。


俺は、彼女のくちびるが
(シアワセ‥)と動くのを見て

(俺もさ‥)、と心の中でことばを返していた。






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