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蝋燭の火?

[357]  けん  2006-09-15投稿
翌日は日曜日であった。
五郎は手短に朝食と身支度とを済ませ、近くの車庫まで歩いた。月極めの専用駐車ガレージが数棟続いている。自分の車を納めてあるところまで来て、シャッターを開け車に乗り込む。長年付き合ってきた彼のマーク?は、すでに廃車寸前の状態まできている。丁度いいやと、心のどこかで五郎は毒づいてみるが、状況が状況だけに、余計に気分を滅入らす結果となった。昨日の出来事によって、五郎はあるひとつの決意をしていた。何かの暗示のような夢、あるいは啓示のような現実の出来事が確かに起こったことは、まだその感触が、脳裏や体の隅々に残っていることから、認めざるを得なかった。
五郎は『蝋燭の火』について幾度となく考えを巡らせてみた。自分はどうしてこれほどまでにあの幻想のような出来事の影響を受けているのか。また、どうしてあの子供の言葉をすぐさま頭から振り払えないでいるのか。行き着く答えはひとつだった。あれは宿命的な予知夢のようなものだったのだ、と。体は激しく疲労しているというわけではない。ただ昨日の子供の存在は確かであると信じさせる何かが、刻印のように体のなかにあるのだ。
マーク?は吹田を出て、郊外からやがては大阪市街りへと入り、車の海の中を泳ぐ。昼でもタクシーがやたら目に付くこのあたりは、営業のサラリーマンや眠そうな目をしたフリーターが、それぞれにあるであろう目的の方向へと流れていく。五郎はこの街が嫌いではなかった。両親はとうにいないが、幼少の頃から彼らの背中と下町の風景を見てきた五郎にとっては、この街自体が育ての親だとさえ思える。出生、親からの愛情、ささやかな思春期、初めての恋人、仕事や人間関係での失敗、数々の成功と挫折…すべてはこの大阪での出来事であったのだ。
やがて五郎は、淀川沿いに車を走らせ、そこから数分も経たないうちに、あるアパートのわきに車を停めた。

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