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怖がりなたかし君の怖いもの

[977] ケィ。 2012-02-07投稿
たかし君が小学生の頃の、塾の帰り道での話。

その日も塾が終わると真っ暗で、たかし君は、街灯の多い明るい道を通って帰る事にしました。


夕方に雨が降ったせいか、周りに人気はなく、空気はまとわりつくようにジトジトしていて、何とも不気味な感じがしたそうです。



歩いていると、いきなり足元が真っ黒になって、たかし君はギクリとしました。

が、次の瞬間、それは通りすぎた街灯に照らされた、たかし君の影だとわかってホッとしました。

次の街灯にたどり着く時には、影はまた後ろに出来、通りすぎるとまた前に出来るという風に、影はたかし君が見ていない間も、たかし君の回りを行ったり来たりしました。

何個目かの街灯を通りすぎた時、また目の前の道に大きな影が出来ました。

たかし君はビクッとしましたが、すぐに自分の影だと思い直して、目を反らそうとして固まりました。

その影は、明らかに自分の足元から伸びていましたが、大き過ぎる…いえ正確には、まるで何かが、おぶさっているようなのです。


背中には、リュックの重みがありましたが、心無しかいつもより重く感じます。

何より、うなじに感じる風の冷たさ、まるで誰かに触られているような気持ち悪さったら…


その時、影が喋りました。
「いない いない…」


怖くなった彼は、家に帰る道を一目散に駆け出しました。

横断歩道の所まで来た時、赤信号に気がつきましたが、車は一台も通っておらず、早く帰りたい一心で信号を無視したそうです。


どんっ。


道路の真ん中で、いきなり何かに突飛ばされて、たかし君は転んでしまいました。

と同時に、物凄いブレーキの音がしました。

たかし君の目の前で、トラックがくの字を描いて、信号機のポストにぶつかりました。

幸い運転手は軽傷だったようで、すぐにトラックから降りて、たかし君を叱ると、何処かへ電話をかけていたそうです。

突飛ばされるまで、確かにトラックなんて無かったのに…

たかし君は頭が真っ白になりましたが、ふと振り返ると、真っ暗な影に何かが立っていて、たかし君たちを見てニヤニヤしていたそうです。


振り返って、最後に彼は言いました。

「怖かったけど、それでも僕は運が良かったんだと思う。
だってもし、あいつが離れてくれなかったら、今でも一人で暗い町を走ってたかも…」

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