旅の話
ライゼンデは探し物をしていた――もっとも探し物とは探しているときに限って見つかりにくいものだ。なのでもうずっと長い間探している。
「はじめましてお兄さん」 その少女と出会ったのは風が気持ち良い草原だった。見渡す限りの緑の絨毯が波の様にさざめくなかに十代半ば程の少女。「やあ、君はここに住んでるのかい? 」 「ええ、そうよずっとここに住んでる」
お兄さんは旅人さんなのかと聞いた少女にそうだよと返す。笑った少女は残念ね面白いとこじゃないわ、と言った。
「ここは今はこんな草原だけど昔は街があったの、人がだんだん減ってこうなった。このあたりはみんなそう、人がいなければ緑は増えてやがて草原になり森になる」 「君はなぜ住んでるんだ? 」
ライゼンデの問いに少女は泣きそうに笑いながらだって、と言った。
「だって待っていれば帰ってくるわ。人は故郷を求めるの。誰かが帰ってくるに違いないから、それまでずっとここにいる。 」
その日少女の家に泊まらせてもらったライゼンデが目を開けると、樹齢数十年はあろうかという大樹の根元だった。
暖かな土の匂いに目元が緩む。少女の泣きそうな笑い顏が脳裏に浮かんだ。
「そうか――君はここにいたのか。」彼女はずっと待っているのだろう。懐かしい人々が戻ってくるまで。故郷の標となりここにいるのだ。
ライゼンデは旅を、探し物を続けるため立ち上がった。
「はじめましてお兄さん」 その少女と出会ったのは風が気持ち良い草原だった。見渡す限りの緑の絨毯が波の様にさざめくなかに十代半ば程の少女。「やあ、君はここに住んでるのかい? 」 「ええ、そうよずっとここに住んでる」
お兄さんは旅人さんなのかと聞いた少女にそうだよと返す。笑った少女は残念ね面白いとこじゃないわ、と言った。
「ここは今はこんな草原だけど昔は街があったの、人がだんだん減ってこうなった。このあたりはみんなそう、人がいなければ緑は増えてやがて草原になり森になる」 「君はなぜ住んでるんだ? 」
ライゼンデの問いに少女は泣きそうに笑いながらだって、と言った。
「だって待っていれば帰ってくるわ。人は故郷を求めるの。誰かが帰ってくるに違いないから、それまでずっとここにいる。 」
その日少女の家に泊まらせてもらったライゼンデが目を開けると、樹齢数十年はあろうかという大樹の根元だった。
暖かな土の匂いに目元が緩む。少女の泣きそうな笑い顏が脳裏に浮かんだ。
「そうか――君はここにいたのか。」彼女はずっと待っているのだろう。懐かしい人々が戻ってくるまで。故郷の標となりここにいるのだ。
ライゼンデは旅を、探し物を続けるため立ち上がった。
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