悪魔の天使 (57)
あの儀式をする原因になったあの出来事の起こる前のこと。
『アルベードがいなくなった!?』
『朝なかなか来なかったから訪ねてみたら荷物はあるのにアルベードはいなかった。だから出ていったってことはないと思う。』
どこか深刻そうな顔に心配になった。
大人しそうな見かけとは違い馬鹿だし強かった。
そのアルベードが拐われるわけがない。
『裏切ったか……。』
小さく、低く唸るように呟いたのが聞こえた。
『不審な動きはなかったからそんなことはなかったと思う…んだけど……。』
疑うことしかできないこの状況に重い沈黙が流れる。
ディルは辛そうで。
だから私はそっと抱きしめた。
彼の肩に頭を乗せて囁いた。
『大丈夫。帰ってくるわ。きっと何かあったのよ。大事な大変な用事が。』
『大事な大変な用事?』
『そう。だから安心して。帰ってくるから。』
『うん。』
相手も抱きしめ返してくる。
あったかくて、安心できて向こうはどんな気持ちだったのかな?
それから二、三日経った頃だった。
『アルベードが…死体で発見された?』
『体はバラバラにされて、顔は誰だか判らない程ぐちゃぐちゃにされていたそうだ。まだ左半身が見つかっていない。』
少しの吐き気に手を口に当てた。
あまりのことに視界が揺らぐ。
『――っ!?』
『ルカ!?』
『ごめんなさい、ちょっとふらついただけよ。』
『もう屋敷に帰った方がいい。誰か呼ぶか』
『いやっ!!貴方と一緒にいたい!』
『でも……!』
『…一緒に…いて……?お願い…怖いの。ずっと…一緒にいたい。』
回した腕に力を込めると宥めるように髪を撫でてくれる。
『ねえ、ルカ、暫くこのままでいいかな?』
声が震えていた。
『いいよ。誰も見てないから。』
私を抱きしめたまま彼は泣いた。
彼の息遣いが聞こえるたびに私は不謹慎だと分かっていながらも嬉しくなった。
ディルは私を頼ってくれてる、と。
『よくやったわ、ドミニエ。』
馬のような鳥のような蛇のような
人のような。
『ところで、アルベードの左半身、どこにやったの?』
ドミニエと呼ばれていた怪獣が低く唸る。
微笑んだ。
『そう、食べちゃったの。』
『アルベードがいなくなった!?』
『朝なかなか来なかったから訪ねてみたら荷物はあるのにアルベードはいなかった。だから出ていったってことはないと思う。』
どこか深刻そうな顔に心配になった。
大人しそうな見かけとは違い馬鹿だし強かった。
そのアルベードが拐われるわけがない。
『裏切ったか……。』
小さく、低く唸るように呟いたのが聞こえた。
『不審な動きはなかったからそんなことはなかったと思う…んだけど……。』
疑うことしかできないこの状況に重い沈黙が流れる。
ディルは辛そうで。
だから私はそっと抱きしめた。
彼の肩に頭を乗せて囁いた。
『大丈夫。帰ってくるわ。きっと何かあったのよ。大事な大変な用事が。』
『大事な大変な用事?』
『そう。だから安心して。帰ってくるから。』
『うん。』
相手も抱きしめ返してくる。
あったかくて、安心できて向こうはどんな気持ちだったのかな?
それから二、三日経った頃だった。
『アルベードが…死体で発見された?』
『体はバラバラにされて、顔は誰だか判らない程ぐちゃぐちゃにされていたそうだ。まだ左半身が見つかっていない。』
少しの吐き気に手を口に当てた。
あまりのことに視界が揺らぐ。
『――っ!?』
『ルカ!?』
『ごめんなさい、ちょっとふらついただけよ。』
『もう屋敷に帰った方がいい。誰か呼ぶか』
『いやっ!!貴方と一緒にいたい!』
『でも……!』
『…一緒に…いて……?お願い…怖いの。ずっと…一緒にいたい。』
回した腕に力を込めると宥めるように髪を撫でてくれる。
『ねえ、ルカ、暫くこのままでいいかな?』
声が震えていた。
『いいよ。誰も見てないから。』
私を抱きしめたまま彼は泣いた。
彼の息遣いが聞こえるたびに私は不謹慎だと分かっていながらも嬉しくなった。
ディルは私を頼ってくれてる、と。
『よくやったわ、ドミニエ。』
馬のような鳥のような蛇のような
人のような。
『ところで、アルベードの左半身、どこにやったの?』
ドミニエと呼ばれていた怪獣が低く唸る。
微笑んだ。
『そう、食べちゃったの。』
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