おじいさんとランド
私は長いことこの椅子に世話になった。この柱に世話になった。この家自体にお世話になってきた。私はもう米寿を迎える老人だ。ばあさんは三年前に亡くなった。しかし私にはどうもそばにいる気がしてならない。そして愛犬のランドは、ばあさんが生きている十年くらい前から家族の一員だ。私らには子供はいなかったので愛犬のランドは我が子みたいなものだった。私はもう歩くこともままならなかったので散歩も難しかったのだが、最近はランドも私と同じように寝たきりになっている。私は久しぶりに布団から起きて椅子に座る。毛布をかけて本を読む。ランドも私の側に寝転がる。ランドは昔からとてもなつき、何をするにも一心同体だった。ランドと時間を過ごすことが幸せだった。しかし、その幸せも長くは続かないだろう。日に日に自分の体が弱っているのを感じるのだ。ある日、私はついに倒れてしまった。ランドが駆け寄る。「ばあさん…」『私はここにいますよ。』ん?ばあさん!と気が付くとばあさんは消えた。するとランドが現われる。ばあさんはずっとランドの体をかりて見守ってくれていたのだ。おじいさんはランドの頭をなで間もなくランドと共に永い眠りについた。
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