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紙袋の中に

[1274] ケィ。 2012-04-10投稿
目の前に知らない女がいる。


こちらを覗き込んでいる、と言えるだろう姿勢で、俺の前にいる。




きっと、自分を殺した相手を探しているんだろう。

目がないから、見つけられないけど。









「〇〇号室の患者さん、最近は大人しくなりましたね。
以前は、顔のない女がどうの五月蝿かったのに」

「やっと自分の殺した相手と向き合う決心でも出来たのかしら」

「まさか。そんな事が出来る人は精神病院に入らないわよ」



看護婦達の口さがない噂にも、当の患者は知らん顔で、明後日の方を向いている。


医者の東條は、その患者を遠巻きに観察するのが日課だった。


顔のない女が悪夢を見せる、と妄想する、白髪頭の殺人犯。

それだけなら、さして注目に値しないが、同じ顔のない女の妄想を抱える者が、最近、外来に何人か来ていた。


一体何が原因なのか、殆んどの者が心当たりがないと言った。


何の接点もない彼らが何故同じ妄想を抱くのか、あの患者を観察すれば、少しはわかるかもしれない。


そう考えて患者を観察し続けるも、目に見える変化と言えば、白髪が伸びた事くらいだった。






ある晴れた日、その東條の報われぬ観察も終わった。


「まだ顔のない女を見る事がある?」

そう尋ねた東條に、その患者は

「気になりますか。











見せてあげる」

















白髪頭の若者は宣う。




若者がどんな顔をしているのか、東條には見えない。


「もしかしたら彼女、俺みたいなのをここに連れて来たくて悪夢なんて見せたのかなぁ?

本当はアンタ達にも、俺なんかよりずっと前から、"彼女が死んだ時から"彼女の事が見えてたんじゃないかな?」



ガサゴソと、紙製の袋に何かを入れる音、次いで若者が病室を出て行く音がした。


東條の前には今、女がいた。"自分が死なせた"顔のない女が。

看護婦の悲鳴が聞こえた。
眼球のなくなった眼窩でそちらを向くも、見えるわけもなく。






制服を着た小学生が、電車の扉近くに置かれた袋を見つけた。

一緒に綺麗な花が置いてあったから、お祝い事の品物を、誰かが忘れてしまったのだろうと思った。


感想

  • 42172:さっぱり意味が解らない…[2012-06-30]

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