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愛病 6

[643]  2012-04-13投稿
部屋に戻ってからも太一は不機嫌だった。
スーツを着たままベッドに横になっていた。
『ねぇ、怒ってる…よね。ごめん。』
私がそう言って太一に近づくと、
「もう、黒猫とは遊ぶなよ。鳴かれても飼えないもんは、飼えないんだ。」
と、彼は体を起こして言った。
『ごめん、』
彼は、少し笑って私を抱き締めた。
「夜ご飯にしようか。」
『うん、』
太一は優しかった。
好きだと、改めて感じた。

その日の夜は静かだった。
どこかに行っちゃったのかな、ふとあの黒猫のことを考えた。
綺麗な真っ黒な毛並みと金色の瞳が忘れられなかった。

次の日も、いつも通りに太一に起こされた。
「ミサキ、おはよう。」
『おはよう。太一。』
いつもの太一だった。

太一を仕事に送り出したあと、もう一眠りしようかとベッドに横になった。
うとうとしかけたとき、猫の鳴き声が聞こえた。
また、あの黒猫だ。
そう思ったが無視しようとした。

でも‥‥‥できなかった。
下に降りると、黒猫はまた嬉しそうに私に近づいてきた。
毛並みは相変わらず美しかった。
金色の瞳には吸い込まれそうになる。
この瞳で何をこの子は見ているのだろう。



太一には秘密で黒猫に会うことが何回かあった。
黒猫が来るのは昼間だから、太一は気付いたようすがなかった。
夜に黒猫は来なくなった。

私はひどく黒猫を気に入ってしまっていた。
太一に飼ってくれないかお願いしたかった。
でも、できなかった。

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