驚いて振りかえると、彼は私を見下ろして言った。
暗くて顔が見えなかった。

｢お前、昼間にあいつとじゃれてただろ。さっきお前の身体に黒い毛がついていた‥‥。２匹の猫が最近よくアパートの前で、じゃれあってるのを見るって大家が言ってたぞ‥。ネックレスはどうせそのとき落としたんだろ？なぁ、そうだろ？ミサキ‥‥？｣
太一の顔が月明かりで見えた。
寂しそうな、ものすごく悲しい顔をしていた。
こんな顔の太一を初めて見た。
どうしてよいかわからなかった。
『‥ごめんなさい。』
私が全ていい終える前に太一は部屋に入った。
そして玄関から出ていった。

私は、後を追いかけた。
下に降りると太一は黒猫を見ていた。
黒猫は私に気付くと鳴いて近づいてきた。
そのとき、太一は黒猫を抱き上げた。
そして、

ポキッ‥‥。

彼は黒猫の首の骨を折った。
黒猫の手足は力なくぶらさがった。
もう鳴くことはなかった。


ど う し て ‥‥ ？

目の前が真っ白になった。
太一は黒猫を殺した。

｢ふふっ。これでミサキは俺のものだよ‥？｣
狂ったようにつぶやく太一が怖かった。

｢おいで、ミサキ？｣
無表情で彼は私を呼んだ。
全身が固まって動けなかった。
｢ミサキ‥‥。｣
彼はゆっくり近づき、私を抱き抱えて部屋に戻った。

私の目は涙でいっぱいだった。
悲しさと恐怖。
太一は、私が震えているのを感じとり、ぎゅっと力を入れて私を抱き締めた。
いつも抱き締めてくれる感じではなかった。
｢どうして震えてるの？｣
太一は聞いてきた。
『ミャー‥。』
泣くことしかできなかった。
｢ねぇ、どうして‥？どうして‥‥？｣
太一は泣いていた。
｢どうして‥‥‥？｣

そして、私の命は消えた。

ポキッという音と共に‥‥。

感想はありません。

• 愛病 ９
• 愛病 ８
• 愛病 ７
• 愛病 ６
• 愛病 ５
• 愛病 ４
• 愛病 ３

もっと見る

• 少年K (1)
• ヤドモリ15
• ヤドモリ14
• 殺神事件
• ヤドモリ13
• ヤドモリ12
• 絶世の美少女

もっと見る