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天体望遠鏡

[322] 比呂 2012-08-17投稿
天の川悠久の時輝けり

食卓に二尾の鰯の夫婦かな

鶏頭や朝日が照りてまた一輪

星空や句会の後の轡虫

上人の法を護れる秋の灯

小さかる赤子の拳終戦日

山の端に夕日かかりて案山子かな

恋したる少女の瞳女郎花

終戦日天を仰げば旅客機や

蟷螂や刈っても捕れぬ思ひあり

いにしへの天竺思ふ月夜かな

細き手にリングをはめた夕月夜

月照らしカフェオレ作り異国人

法師蝉解く数式の確かなり

弦がまた切れたと言ふやきりぎりす

霧晴れた真昼の原に駿馬駆け

啄木鳥と日曜大工父も打ち

少女笑み手にいっぱいの草の花

残暑とは知らぬ我が身の籠り唄

幼子の鮭は切身で泳ぐかな

鹿の声吾は素知らぬ振りをせり

電灯の明かりに怪し菊の花

枝豆や√の中に入りたる

暮れ時の白粉花や冥伏す

密林にただ一点の色鳥や

相撲取りやれまた今日も泥まみれ

政治家を嫌ふことなる鱸かな

縁側や鶺鴒の時過ぎにけり

中元のけふ宿題の贈り物

満天の空に月の鏡かな

三日月や宇宙(そら)に浮かぶ舟のやう

白昼に月の夢見る赤子かな

口辛く罵倒するかな唐辛子

墓参できずに鳴りし時の鐘

初秋や林の声と空の色

ポクポクと何を言ふのか鯊の口

蜩や先に盛りたる父の碗

どこまでも隈無く続く花野かな

白肌に嘘を塗りたる糸瓜かな

君の声ひと際立ちて星月夜

松虫の棲むところなる子供部屋

水澄みて攻めぎ合ふかな空の色

虫の声真昼になりて恋しかる

秋風や無量の衆生鎮魂歌

秋麗管弦楽の数々(くさぐさ)や

旅人や四方八方赤蜻蛉

撫子や日の当たりたる草の中

葉鶏頭絵筆の走るところかな

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