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梅林賀琉2〜井手らっきょ〜

[422] 比呂 2012-08-22投稿
「何を仰いますか、浦島様はこれからですよ

まだまだお若いではありませんか

それに、再び申しますがこの度の戦の大勝利は浦島様のお陰です

きっと、私のよううに目に見える変化はなくとも何か尊いスペシャルプレゼント的なものが待っているとお考えになった方がよろしいかと存じます

ですから、私についてきて下さいませ」

そう言うと、亀吉は近くの梅林に向かって走り出そうとした

「おい、なんか今回は地味じゃないか」

「いえ、これでも滋味豊かなキャラメルのつもりで御座います」

「じゃなくてさぁ」

「サァは、愛ちゃんのかけ声ですな」

「うん、亀吉も人間のことをよく勉強して偉いなと言いたいが、僕は何もそんなことを訊いちゃあいない」

「では、何をお訊きになりたいのですか」

「校則違反のチンチーリキとかいうやつを使うんじゃあなかったけ」

「それなら、高速移動の神通力に御座いますね」

「うん、それだ

肩に捕まらなくていいのか」

「はい、確かに前は二人でしたのでそうしていましたが、この度は四人でしかもそのうち浦島様以外は三人とも神通力が使えます

したがって、普通に走りながら次第に軌道に乗っていただくかたちとなります

とりあえず、私におつきになって普通に走って下されば良いのです」

亀吉の説明を聴くと、織姫と彦星は僕以上に得心のいった顔で頷いた

結局、僕は亀吉についていくかたちで走り出したが、僕だけはその異常なスピードについていけなかった

高校時代、野球部に所属していた僕は公式戦でのスタメン入りはできなかったものの足は陸上選手並みに速く、後輩から梅林先輩の走る姿は井手らっきょとか、モーリス・グリーンのようだと謳われていたぐらいだ

したがって、最後の夏の公式戦では代走で出塁し、見事に三盗まで果たしたのである

その男がだ

彦星は仕方ないにしても、陸上ではのろまであるはずのもとは海亀であるはずの亀吉と毎日機織りに追われて運動不足である女人の織姫に光の速さで追い抜かされてしまった

最初は四人とも同じ速さであったのに、いつの間にか僕以外の三人はあり得ないほどの速さで加速して光の矢のごとく梅林に消え入ってしまった

なんだか途轍もなく速いランニングにひとり取り残されてしまった僕は途方に暮れてしまったが、そんな時に亀吉が喜びそうなジョークを思いつき、呟いた

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