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餓鬼

[741] 紗依枯(さいこ) 2012-08-28投稿
私が初めて由梨絵に会ったのは、5年前だった。

その頃、新婚間もない私達はこれからの幸せな家庭を夢見ていた…

そう、由梨絵に会うまでは…
妻の喜美は回りに友人も居ないこの土地に一生懸命親しもうと努力した。

ある日、見知らぬ女性が助けを求めてやって来た。
ピンポ〜ン、ピンポ〜ン…
「はぁい、どちら様ですかぁ?」
インターホンの画面には45、6歳の女性が立っていた。
「すみません…。申し訳ありませんが、お水を一杯頂けませんか?」

喜美は一瞬、躊躇したが、相手が女性で、苦しそうに見えたので玄関を開けた。
お水の一杯位構わないわ。
近くに自販機も無いし、余程苦しいんじゃないかしら?
お水を差し出して渡すと、鞄の中から薬を取り出して急いで飲んだ。
「有難うございます。本当に助かりました。後10分もすればアパートに着くのですが、余りに辛かったもので…」
そういうと、優しい笑顔でニッコリと微笑んだ。
「構いませんよ。それより大丈夫ですか?」
「はい。お陰様で本当に助かりました。遅くなりました、私はこの先の葉月荘に住んでおります、松木 由梨絵と申します。又、改めましてお礼に伺わせて頂きます。」
深々と頭を下げて、その女性は出て行った。

何だか、とても良い気持ちに喜美はなっていた。

私が帰ると、喜美は由梨絵の事を話してくれた。
「そうか。喜美は優しいな。でも、いくら相手が女性でもこれからは気をつけないと。」
「解ってるわよ。私はこう見えても人を見る目は有るんだから!あの人は悪い人じゃないわ!」
喜美はせっかく良い事をしたつもりだったのに、私の一言で少しムッとした様だった。
「ごめん。喜美の事が心配だったから…。そうだね、喜美は用心深い女だし、俺が余計な事を言ってしまったね。」

喜美は23歳、私は33歳と離れているからか、いつも折れるのは私の方だった。

翌朝、玄関のインターホンが鳴った。
「こんな早くに誰かしら?」
「俺はもう行くから、出てあげるよ。」
玄関を開けると、小綺麗な優しそうな笑顔の女性が包みを持って立っていた。
「おはようございます。朝早くに申し訳ございません。前日、奥様にお世話になりまして御礼に伺わせて頂きました。」
「そうでしたか。ご丁寧に。でも、お気遣いなく。妻も当たり前の事をしただけですから。」
そう言うと、喜美を呼び私は会社へと家を後にした。

喜美と由梨絵は私を見送り、家の中に入って行った。
「確かに悪い人じゃなさそうだな。喜美も良い相談相手が出来たな。」

私はそんな事を思いながら車を走らせていた。

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